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ドイツのBVL国際サプライチェーン・カンファレンスに初参加

【News Pickup】ドイツのBVL国際サプライチェーン・カンファレンスに初参加

 「インダストリー4.0」を推進する一方で垣間見た「ロジスティクス4.0」への恐怖

10月17日の週に、世界のロジスティクス業界で注目のカンファレンスが2つ開催されました。一つ目は「MHI 2016アニュアル・カンファレンス」(10/17~19)で、二つ目はドイツの首都ベルリンで開催された「BVL第33回国際サプライチェーン・カンファレンス」(10/19~21)です。今回、BVLカンファレンスの方に参加してきましたので、そこで得た情報や当地で感じた雰囲気をお届けしたいと思います。

MHIとは北米最大のマテハン機器、ロジスティクス、サプライチェーンの協会で、800以上のメンバーを抱えています。以前当ニュースレターでお伝えしたモデックス(MODEX)などのマテハン機器展示会の主催者でもあります。MHIもBVLも、物流業界内のネットワーキング、最新技術を含む事業環境の情報交換・勉強を目的として毎年1回開催されています。有料ですがメンバーでなくても参加が可能です。

筆者としてはどちらも参加したかったのですが、アリゾナからベルリンへ“はしご”するのは旅程的に無理でした。しかしよりによって何で同じ週の開催にしたのか…。
マテハンやロジスティクス技術の世界では、アメリカとドイツは強力なライバル関係にありますから、お互いに張り合って同じ週に開催したのではないかと邪推してしまいます。

筆者は今回、ベルリンのBVLカンファレンス行きを決断しましたが、MHIには他のメンバーを派遣しましたので、そちらは来月以降に紹介させていただければと思っております。

BVLカンファレンス会場外観写真1:BVLカンファレンス会場外観

BVLカンファレンスの入場口 写真2:BVLカンファレンスの入場口
RFIDタグで入場者を管理

BVLとは

まず主催者であるBVLについてご紹介しましょう。BVLは正式名称「Bundesvereinigung Logistik」という非営利団体です。最近日本人選手も多くプレーしているドイツ・サッカーリーグの「ブンデス・リーガ」と同様の「Bundes(ブンデス)」という言葉が付いていますが、これは英語では「National」もしくは「Federal」、日本語では「連邦」といった意味です。当社に来ているドイツ人インターン曰く、日本語訳は「ドイツ・ロジスティクス協会」で差支えないとのこと。アメリカのMHIとほぼ同じ目的・機能を持った団体だと考えていただいて良いでしょう。BVLのメンバー数はMHIを大幅に上回る10,861。ドイツだけでなく欧州各国を含む他国からも参加しているのが特徴です。

カンファレンスの様子

この催しは3日間に渡って行われましたが、カンファレンスとブースでの展示に大別されます。カンファレンスには合計65時間が割かれ、展示よりカンファレンス(プレゼンテーションやディスカッション)がメインの会合でした。詳細は後述しますが、討議内容・テーマとしては「企業戦略系」の話が多かったのも特徴です。毎年3月にシュトゥットガルトで開催される欧州最大のマテハン展示会「ロジマット」や、日本で行われる「国際物流展」などでは、現場での改善事例のような「オペレーション系」の話が多い印象がありますので、そこが両者の大きな違いでしょう。ちなみにBVLではドイツの主要ロジスティクス企業の経営幹部が集まってきています。(なお、ほとんどのカンファレンスはドイツ語で行われ、同時通訳を通じて英語で聞くことができます。英語で質問すると、英語で回答が返ってきました。)

BVLカンファレンス会場内の様子写真3:BVLカンファレンス会場内の様子

BVLカンファレンス ブースエリアの様子写真4:ブースエリアの様子

ドイツのロジ業界のキーワードは「恐れ」だった

今回のBVLカンファレンスの主題は「Driving Change(変革をドライブする)」、副題は「Digitize it(デジタル化せよ)」でした。ドイツでは官民あげて「インダストリー4.0」を標榜し、積極的に変革を推進しています。弊社でもたびたびドイツでの展示会などで得た「インダストリー4.0」関連の情報をご報告しておりますが、それらは主に製造業(メーカー)もしくはIT企業が発信するものが中心でした。物流・ロジスティクスの分野では、一応「ロジスティクス4.0」という同業界向けの標語もあるものの、業界自体がいまひとつブームに乗れていない状況でした。しかし、今回のカンファレンスでは、業界(=BVL)の方から「我々ドイツのロジスティクス業界は変わらなければいけない」、「デジタル化せず旧態依然だと生き残れない」とスローガンを掲げ、さながら“決起集会”のようでした。筆者は昨年から欧州取材を続けており、ドイツには大体2ヶ月に1回のペースで来ておりますが、「論理的」と「理路整然」が代名詞のようなドイツビジネスで、このような精神的な“決起集会”のようなものに接したのは初めてです。大変驚き、「あれ、ココは日本か?」と錯覚したほどです。

「ロジスティクス4.0」で言われていることは、物流データのデジタル化、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)によるそれら大量のデジタルデータの取得、人工知能による大量データの分析、分析結果によるサプライチェーンの圧倒的な効率化、新しいロジスティクスサービスの登場などです。これらがやって来て「ドイツの物流・ロジスティクス業界をガラリと変えてしまうのは不可避である」と、なので「抵抗は止めて変わらなければいけない」と、各々のカンファレンスの議題に関係なく、そのように語られていました。ベルリン開催を受けて「物流・ロジスティクス業界にある“ベルリンの壁(これまでの慣習の意)”はまもなく崩れる」と、なかなか上手い言い回しをする方もいらっしゃいました。

筆者が一番気になったキーワードは、変化することへの「Fear(恐怖)」でした。「ロジスティクス4.0という得体の知れないものがやってくるのは仕方がない。事業環境がそうなら嫌でもその事実を受け入れざるを得ないが、だったらどうすればいいのか?」という葛藤が強く感じられました。これは、筆者がただ感じたのではなく、実際に複数の登壇者から「Fear」という言葉が発せられたのを聞いています。ドイツは自信満々に「ロジスティクス4.0」を邁進し、日本の数歩先を行っていると思っていましたが、個々の企業は「Fear」を抱いているとは、「ここら辺も日本と同じだな~」と感じ、少し安心した次第です。(いや、本当は安心したらダメなのでしょうけど…。)

また、ドイツが“自虐的”になったところも初めてみました。「変わらなければいけない」という点で、比較の対象となっていたのはアメリカ、特にシリコンバレーのベンチャーです。「ライバルはアメリカ。アメリカはドイツと違ってリスクを恐れずトライ&エラーでどんどん前に進む」「リスクを取らないとイノベーションは生まれない」「我々(ドイツ)のスピードは遅すぎる」などなど。

以前、「日本ではアップルのようなイノベーティブな商品が生まれない」「何故ソニーはアップルのようになれなかったのか」などの記事を読んだ記憶がありますが、まさしく同じ自虐的な状況でした。ちなみにシリコンバレーのIT企業アメリカ人CTOが登壇した際:

  • ・ロジスティクス業界は過去を生きている。
  • ・参入障壁が高いので、これまでのところスタートアップ企業の攻撃をあまり受けていない。
  • ・いくつかのスタートアップ企業が足がかりをつかめば、あっという間に非連続的な変化が起きる可能性が大きい。
  • ・ロジスティクス業界は“兆”の桁の市場。いくら参入障壁が高くても、スタートアップ企業の攻撃が止むことはない。

と述べて、会場が盛り上がりました。その盛り上がりは「Fear(恐怖)」が増幅されたからなのか、それとも“我々もスタートアップ側になって変わるのだ”という変革への強い意思表示なのか。筆者には後者のように感じられました。

さて、日本はいったいどうするのでしょうか?

 

<おまけ>

最後に、本ニュースレターは“お堅くない”ことも売りにしておりますので、ベルリンの名所名物で締めておこうと思います。写真5は名所中の名所、ブランデンブルグ門です。撮影したのは早朝ですが、ライトアップされた姿が綺麗でした。写真6はベルリン名物の料理カルブスレバー(肝臓)です。りんごと玉ねぎのソースが濃厚で甘く、レバーの臭みを消して絶妙な味です。ベルリンを訪れる際には是非お試しを。

ライトアップされたブランデンブルグ門写真5:ライトアップされたブランデンブルグ門

ベルリン名物料理 カルブスレバー写真6:ベルリンの名物料理 カルブスレバー

世界のIoT化動向とロジスティクス

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