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事故を教訓にして普及したイエローカード

【News Pickup】事故を教訓にして普及したイエローカード

危険物輸送の万が一の備え

6月上旬、タンクローリーの輸送中の交通事故による危険物の流出事故が続けて発生しました。消防の迅速な対応で大きな被害にはなっていませんが、交通事故は物流事業者にとってなかなか避けられないリスクです。今回はこのような交通事故発生時に、危険物による被害拡大を防ぐため、準備をしておくことの重要性について考えてみたいと思います。

6 月 6 日午前 5 時半頃、岐阜県関市西神野の県道交差点で、タンクローリーが横転し、積んでいたガソリン数千リットルが流出しました。けが人はいませんでしたが、ガソリンは近くの川に流れ込み、消防がオイルフェンスを設置、吸着マットで除去しています。現場付近の道路は約 3km 通行止めとなりました。

また、6 月 10 日午前 5 時頃、京都市伏見区桃山町の府道で、トラックがタンクローリーに追突し、積んでいた塩酸約 6,500 リットルが流出しました。1 時間半にわたり塩酸が漏れ、消防が大量の水をまくなどして作業に当たりました。消防は一時、近隣住民に外出しないよう要請し、周辺は交通規制が敷かれました。

このような事故による危険物の流出時に有効なのがイエローカードです。この 2 件の事故においてもイエローカードの果たした役割が大きかったのではないかと推測しています。イエローカードは文字通り黄色い書面で、通常 A4 サイズの表裏に危険物の製品名や性状、流出時の処理要領や緊急時の連絡体制等が記載されています。これを見れば、仮に事故で運転手がしゃべれない状態でも、消防が輸送貨物の詳細を把握することができるカードです。今回の 2 件の事故で流出した危険物は、広く一般に知られる製品なので、迅速な処理ができたのではないかと考えられますが、いずれにしても、イエローカードの果たす役割が大きいことは間違いありません。

イエローカードの携行が義務化されたのは、大きな交通事故がきっかけとなっています。平成 9 年に静岡県内の東名高速道路で発生したタンクローリーの単独横転事故では、流出した危険物の特定ができなかったため、当該危険物の処理要領の確認、除去等のための資材の確保、積替え車両の確保及び現場路面の清掃等に多くの時間を要しました。その結果、約 15 時間(上り線は約 10 時間)にわたり通行止めが行われ、日本の経済活動の大動脈である東名高速道路に多大な影響を与えたのです。

この事故を受け、危険物運搬車両の事故発生時の対応の強化として、①イエローカードの普及、②危険物等のデータベースの構築、が関係省庁間で合意され、現在ではイエローカード携行が義務化されています。この流れは、現在の労働安全衛生法の SDS(安全データシート)にもつながっています。ちなみに、塩酸の SDS サンプルによる流出時の処理要領は、下記のように記載されています。

適切な保護具を付けて処理すること。土砂などに吸着させて取り除くか、又はある程度水で徐々に希釈した後、消石灰、ソーダ灰等で中和し、多量の水を用いて洗い流す。発生するガスは霧状の水をかけ吸収させる。

 このように準備をしっかりしておけば、万一の時にも被害を最小限に食い止めることができるのです。

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イエローカードのサンプル
出所:ドライバーのための化学品安全輸送手帳(イエローカード編) 公益社団法人全日本トラック協会

 危険物であることをきちんと認識して事故を未然に防ぐ取り組みも重要になりますが、一方で、国内での流通環境を踏まえた消防法や毒物及び劇物取締法等と、世界的な基準を反映している国際間輸送の規則である IATA 危険物規則書(航空輸送)・ IMDG コード(船舶輸送)とでは、危険物の取扱基準が異なっており、それぞれに適した対応が求められてきます。具体的な例として、アルコール飲料に含まれるエタノールは、 IATA では容量濃度 24%超が規制対象ですが、日本の消防法では重量濃度 60%(容量濃度約 67%)以上が規制対象になります。

このような異なる基準の一つひとつに対応しながら法令を遵守していくことは大きな労力となります。法律や規則が複雑だからといって、理解せずに大きな事故を引き起こせば、知らなかったでは済まされません。

人も物もグローバルに移動する時代であり、危険物輸送もまたグローバル化への対応が求められるようになっています。弊社では、危険物輸送に関してこれまで多くの提案・検証を行ってきました。危険物輸送時にお困りの際は、お気軽にお声掛けください。

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この記事の著者

◆出身地:長野県鬼無里村(現在の長野市)◆血液型:A型  ◆趣味:アマチュア野球観戦
【得意分野】・地球温暖化対策、物流に係る標準化(JIS規格等)・危険物輸送コンサルティング等

9月に入ってからめっきり涼しくなってきました。これからは寝苦しい夜が減り、ゆっくりと眠れる日が多くなりそうです。きちんと眠れれば、仕事中に眠くなることが減り、さらに集中して仕事ができそうです(願望)。
物流業界では、業務中に眠ることは必然的に事故につながるため、休憩などにより眠気をコントロールすることは非常に重要になってきます。最近はやりの自動運転でも、現在の国際的なルールの中では、人の監視下での自動運転となっており、自動運転から人の運転に切り替わる瞬間が生じるので、運転者が覚醒していなければ事故につながる可能性が生じます。先日聴講した自動運転関連のセミナーでは、運転者の意識は目の動きで把握できそうとの報告がされていますので、目の動きでアラートを発することが可能になりそうです。
オフィス業務で将来、眠気感知のために目の動きをモニターされる可能性は低いと思いますが、小職も目の色を変えて仕事に取り組み、たとえ仕事中に眠気が襲ってきたとしても、目の動きでさとられないように、いまから鍛錬していきたいと思います。

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