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【物流コスト管理】「物流ABC」が簡単にわかる3つのポイント

まずはこんな質問から始めてみましょう。
野球とかテニスなどが上手くできるようになるためにはどうすればいいとあなたは思いますか?ひたすら試合に出る?

もちろん実戦練習も大事でしょうが、まったくの初心者ならば最初はキャッチボールとかストロークなどの基本練習が欠かせませんよね。
では、なぜキャッチボールやストロークなどの基本練習をするのでしょうか?コーチになって考えてみましょう。
練習メニューを考えるとき最初にやるのは、実戦で必要となる一連の動作を基本要素に分解してみることではないでしょうか。

例えば、野球の試合で行う一連の動作を分解してみると、キャッチボールやバッティングといった動作が極めて重要な基本要素だとわかるわけです。

だから、この基本要素となる動作を素早く正確に行えるように反復練習することになります。

ポイント① 物流活動を基本要素に分解して捉える!

実は「物流ABC」の入り口の発想も同じです。

例えば、荷主Aに対する物流サービスのコストが適正かどうかを判断したいとしましょう。荷主Aに関する物流サービスの全体をバクゼンと見るだけでは何もわかりません。

そこで、まず、物流サービスとして行われる活動を基本要素に分解してみるわけです。基本要素に分解して一つ一つの活動をコスト測定の「単位」として使えるように工夫することで、物流サービスを正確に数値化して捉えることが可能となります。

では、物流サービスを分解して得られる基本要素にはどんなものがあるのでしょうか?
野球の場合もどんどん細かく分けていくと「ボールを握る動作」「腕を振り下ろす動作」といったレベルまで分解することは可能です。しかし、それでは通常の練習メニューとしては細かく分けすぎです。コーチは、チームの課題に合わせて適切なレベルに分解した基本要素を練習メニューとします。

同じように、「物流ABC」でもどのレベルまで分解すればいいのかは、目指す管理のレベルによって違ってきます。
例えば、「入荷」「保管」「出荷」「加工・付帯」といった大分類にとどめる場合もあれば、より細かく「入荷」を「デバンニング」「荷下し・荷受け」「入荷検品」などの項目まで分解する場合もあるでしょう。あまり細かく分解しすぎると「物流ABC」を適用する上で手間が増えることになります。そのため、どこまで細かい管理が必要なのかという点を考えながら分解のレベルを調整します。

なお、「物流ABC」では分解した基本要素となる活動のことを「アクティビティ」と呼んでいます。そこで、物流活動を基本要素に分解して捉えるという入り口の作業のことを、「物流ABC」では「アクティビティを設定する」と表現しています。

ポイント② コストを測れる「ものさし」を作る!

「物流ABC」の出口の発想は「ものさし作り」です。要は、物流倉庫で行われている複数の荷主向けの多種多様な活動を専用のものさしで測定し、簡単にコストを算出できるようにしたいのです。そのために物流サービスをアクティビティという基本要素(計測単位)に分解したわけです。

そして、「物流ABC」ではアクティビティごとにいくらコストがかかっているかという「アクティビティ単価」を求めるために、アレコレ作業をすることになります。
アレコレやる面倒な作業は、アクティビティごとにいくらコストがかかっているかということを求めるため、つまり、アクティビティごとにコストを測る専用の「ものさし」を作っているのだとご理解ください。

例えば、「入荷検品」をアクティビティとして設定してアクティビティ単価を計算してみると、1ケースあたり5.6円だったとしましょう。これは1ケース「入荷検品」を行ったら、そのコストは5.6円になるということです。このような入荷検品専用の「ものさし」ができていれば、後は何ケース処理したかという処理量さえわかれば、「入荷検品コスト」が簡単に計算できるというわけです。

例えば、荷主A向けに150ケース、荷主B向けに200ケース処理した場合、それぞれ入荷検品コストは150×5.6=840(円)、200×5.6=1120(円)というように簡単に算出できます。

ポイント③ 「集める」「振り分ける」「割る」の3ステップで単価を算出!

「物流ABC」ではアクティビティ単価というコスト測定用ものさしを作ることが目標となります。この目標を達成するためには「集める」「振り分ける」「割る」という3つのステップが必要です。

例えば、近所の皆さんを集めてホームパーティをするとします。料理は各家庭から持ち寄ってもらいます。いろいろな料理を参加者ごとのプレートに盛り付けるわけですが、人によって食欲に差がありますので、それに応じて盛り付ける量は異なることになります。

実は、「物流ABC」でもまったく同じようなことをします。
最初にコストを「集める」という作業をします。集めてみるとコストはこの段階では「人件費」「スペース費」「機械設備費」「資材消耗品費」というような分け方になっています。つまり家庭ごとに持ち寄った「チラシ寿司」「ローストビーフ」「ケーキ」の大皿といったイメージです。これを「入荷」「保管」「出荷」などのアクティビティごとに振り分ける」のです。

料理であれば参加者ごとの「食欲」に応じて各自のプレートに盛り付ける量を変えますが、コストの場合はアクティビティごとの「使用実態」に応じて振り分けます。
例えば、「人件費」であれば、「入荷」「保管」「出荷」などのアクティビティごとにどれくらいの作業時間が使用されたかを測定して、その割合で振り分けていくわけです。この振り分け作業を「配賦(はいふ)」といい、作業時間のように振り分けの基準となるものを「配賦基準」といいます。

「入荷」「保管」「出荷」などのアクティビティごとに「人件費」「スペース費」「機械設備費」「資材消耗品費」の各コストが振り分けられると、それをアクティビティごとに集計します。仮に1ヵ月分のコストを振り分けたとしますと、集計した金額はアクティビティごとの月間コストとなります。

このように集計したコストを「アクティビティ原価」といいます。

次に行うのは、各アクティビティによって処理された最小単位である1ケースとか1ピースごとのコストを求める作業です。
そのためには、アクティビティ原価に対応した処理量の数値が必要です。
例えば、「入庫(棚入れ)作業」というアクティビティの1ヵ月の原価が100,000円だったとして、その期間に何ケース分の「入庫作業」を行ったのかという数値が必要なのです。

では、この場合仮に2500ケース分の作業をしたとしましょう。そうすると1ケースについて「入庫作業」というアクティビティを行うのにかかるコストはいくらになるでしょうか。これを求めるには100,000÷2500=40という計算をすればいいですね。つまりアクティビティ原価を処理量で「割る」わけです。そうすると1ケースについて処理を行うのに必要なコストが求められます。上記の例では1ケースについて「入庫」というアクティビティを行うには40円のコストがかかることがわかります。このようにして求めたコストを「アクティビティ単価」といいます。

まとめ

誰でも簡単に「物流ABC」を理解するための3つのポイントをご紹介してきました。
「物流ABC」では、まず物流活動を基本要素に分解して捉えます。なぜ基本要素に分解するのかといえば、活動にかかるコストを測れる「ものさし」を作りたいからです。このものさしのことをアクティビティ単価といいます。

具体的にアクティビティ単価を求める際には、「人件費」「スペース費」「機械設備費」「資材消耗品費」というコストを集めてきて、それを適切な配賦基準によってアクティビティに振り分けることでアクティビティ原価を算出します。
さらに、アクティビティ原価を、それに対応する処理量で割り、1単位あたりのコストを求めるわけですが、こうして求められたコストがアクティビティ単価です。

「物流ABC」のABCとはActivity-Based Costingの頭文字を取ったものであり、これはアクティビティを基準とした原価計算という意味です。

物流活動を基準となるアクティビティという要素に分解するのだというところが「物流ABC」の発想の最大の特徴といえるでしょう。

物流データ分析を始めてみよう!

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