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フルフィルメント代行サービスの内容と物流会社への今後の影響

フルフィルメント代行サービスの内容と物流会社への今後の影響

「フルフィルメント」
この舌を噛みそうな英語も物流業界でだいぶ浸透してきました。その意味ですが、流通・小売物流ドットコムさんのサイトにある「リテール&ロジスティクス用語集」では「通信販売やECにおいて、受注から配送までの業務(受注、梱包、在庫管理、発送、受け渡し、代金回収まで)の一連のプロセス全体のことを指します。さらに、お客様の手元に商品が届いた後の業務(苦情処理・問い合わせ対応、返品・交換対応、代金の督促)や、受注までの業務(撮影・採寸・原稿作成などのささげ業務、顧客データ管理・分析など)などの周辺業務まで含めて使われることもあります。」と説明されています。流通・物流分野での様々なイノベーションはECを中心に起きており、筆者が最先端物流技術の話をする際にも必ず触れています。しかしながら「フルフィルメント」という言葉を知っていても、意外にその内容や代行サービスについて知らない方がいることに先日気づきました。そこで今回はフルフィルメントの代行サービスがどんなものかを例を挙げて説明したいと思います。

イタリア製靴のECサイトを立ち上げ

最初に申し上げますが筆者のファッションセンスは「ゼロ」です…。が、分かりやすく説明するために筆者がイタリア製の靴が大好きなマニアで、年に数回イタリアを旅しながらファッショナブルな靴を調達し、日本のECサイトで販売するとします。個人ビジネスなので、リアルの店舗に卸すのではなく、アマゾン、楽天、Yahoo!ショッピングとあと自社のサイトも立ち上げ、複数のオンライン店舗だけで販売します。店舗名は「クツ・イタリアーノAB(筆者のイニシャル)」とでもしておきましょう。

クツ・イタリアーノABは筆者の洗練された商品選びと巧みなネットプロモーションもあり、どんどん注文が舞い込みます。皆様もご存知の通り、ネットサイトの注文は夜に集中します。また今の消費者は発注してから商品が手元に届くまで翌日、長くても3日以内を要求します。なので筆者も注文を受けたらすぐに出荷できるよう努力します。しかしその前に発注者は何を頼み、その在庫はあるのか、決済はどんな方法でちゃんとなされているのか、住所はどこでちゃんと正しく記載されているのか、などなどを確認する必要があります。それから注文はどのECサイトからなのか、何を同封するか(納品書など)、どの外装箱(ECサイト別に違う場合など)でどの宅配業者の送り状を使って発送するか、など様々な「業務」があります。注文が夕方から夜に集中するため、次の日に出荷するため対応せざるを得ず、忙殺されて夜眠れません…。靴の在庫も自宅の一部屋に置いておくと、家族からクレームが(泣)

そこで筆者は泣き叫ぶのです、「俺はイタリアの素晴らしい靴をできるだけ多く日本の皆様に届けたいんだ!俺は靴の目利きとアピールは好きで得意。でも決済確認、伝票印刷、梱包とか知らんがな!でもほとんどの仕事は好きじゃない業務に忙殺されて、イタリアに買い付けにも行けないし、プロモーションするサイトの更新もままならない…。」

さて、どうしたものでしょうか?人を雇ってこれらの業務をやってもらう、という解決策もありますよね。実際そうしているECサイトは沢山ありますし、クツ・イタリアーノABを会社化し、事業を拡大して自分で倉庫を借りてやるという手もあります。もう一つの選択肢は、そう「フルフィルメントの代行」です。

フルフィルメント代行の流れ

フルフィルメントの代行には大きく分けて前半の受注処理と後半の倉庫業務の2つに分けられます。前半部分はIT企業、後半部分は倉庫業もしくは物流会社が請け負いますが、提携しているケースも多々あります。

クツ・イタリアーノABはZ社というフルフィルメントの代行業者と契約します。Z社はフルフィルメント・バイ・アマゾン(以下、FBA)を薦めてきたので、それに乗ることにしました。Z社はまず受注管理、在庫管理、決済管理などの機能を持ったZ社のプラットフォームにクツ・イタリアーノABの売り場(アマゾン、楽天、Yahoo!、自社サイト)を連携させます。これで個人客から夜に発注が来ても、自動で決済をし、出荷指示を出せるようになりました。在庫管理もリアルタイムになり、楽天で売れた直後に自社サイトで同じものが売れそうになっても、すぐ「現在在庫がありません」と表示されるようになり、顧客からのクレームも減りました。

ところで、筆者の自宅にあった靴の在庫はどこへ行ったのでしょうか?もちろん倉庫なのですが、FBAの場合、アマゾンの倉庫内に置いておくのです。で、Z社のシステムで処理した出荷指示は、オンラインでアマゾンの倉庫に伝達され、そこからアマゾンの作業者がピッキング、梱包、発送ラベルの印刷と添付、出荷、という一連の業務を行います。出荷後は指定の配送業者に渡され、購買者の自宅へ届けられます。尚、購買者がYahoo!のサイトから購入した場合でも、この場合はアマゾンの倉庫から出荷されます。但し、外装箱はアマゾンのロゴが入っておらず、購買者には買った商品がアマゾンの倉庫から来たとは分かりません。

フルフィルメント業務からの解放

代行業務を利用することにより、筆者が寝ているうちに商品を受注し、発送業務が完了するようになりました。筆者は得意な商品調達と売るためのプロモーションに集中できるようになり、益々クツ・イタリアーノABは発展し、大金持ちになりましたとさ。めでたしめでたし!(架空の話です) もちろんZ社のサービスやFBAはタダではありません。Z社のシステム利用料、出荷ごとの取扱手数料、保管料などがかかりますので、他の手段と比べてペイするかなどの検討は必須です。

フルフィルメント代行のメッセージは明確です。「あなたは得意な商品開発とブランディングをやって下さい。その他の業務は我々がやっておきますから。尚、物流はその内の一つの業務にしか過ぎません」というものです。

フルフィルメント代行はB2Cだけか?

クツ・イタリアーノABの例は個人ビジネスでしたが、ECを手掛ける多くの中小・中堅企業にも大いに活用できそうだと考えられます。自社で手掛ける場合と比べて初期投資が少なく、「使った分だけ支払う」という今流行りのサブスクリプション・モデルでもあるからです。

Z社のような会社はベンチャーから大企業まで多数出てきており、ITの活用と出荷作業の自動化などのイノベーションが試されています。ドイツでは「Arvato SCM Solutions」という会社があり、上述のZ社とFBAの機能を1社で提供しビジネスを拡大、既存の物流会社を脅かしています。東南アジアでは「aCommerce」というフルフィルメント代行会社が同地域のECの爆発的な伸びを支えています。アマゾンも自社ECのフルフィルメントだけでなく、黒子のように他社ECの業務をFBAとして行っているのは紹介した通りです。

さて、これらのフルフィルメント代行ですが、現在はEC、いわゆるB2Cビジネスを主な分野としていますが、将来的にB2Bに入って来ないのでしょうか?オーダーをオンラインで受けて、自動で受注管理、決済、在庫確認などを行い、倉庫側にデータを送って、自動ピッキング、自動パッキング、出荷準備OK、となる一連の動作はB2Bでもほぼ同じではないんでしょうか?特にECのように小さいもの、多品種少量もの(パーツなど)は親和性が高いのではないかと思います。既存の物流・倉庫会社も、対岸の火事ではなく、フルフィルメント代行の今後の動向は気にしておいた方がいいでしょう。

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