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欧米保護主義がSCMに与える影響 第2回:英国発アイルランド向け貨物輸送はどうなる?

本シリーズの初回は、主としてフェリーやRoRo船に載ってくる貨物も含むトラック輸送に焦点を当てながら、EU発英国向け貨物輸送について、特に後半は英愛国境を経て英国に入って来る貨物輸送について述べました。

そこで今回と次回の二回に亘って、逆に英国発アイルランド向け貨物輸送について、前回と同じくフェリーやRoRo船に搭載される貨物を含むトラック輸送に焦点を当ててお話し致します。

英国にとって重要な貿易相手国、アイルランド

まず述べて置きたいのは、アイルランドが英国にとって、非常に重要な貿易相手国であるということです。本年7月26日付けHouse of Commons Library発行の” Statistics on UK trade with Ireland”によると、2018年の英国の対アイルランド輸出総額は383億ポンドで第5位、輸入総額は219億ポンドで第9位なのですが、その貿易黒字額の164億ポンドは、対米国の458億ポンドに次ぐ第2位、第3位の86億ポンドの2倍近くになっています。同年の貿易全体としては309億ポンドの赤字だった英国にとってアイルランドは、極めて優良な顧客であると言ってよいでしょう。

特に、アイルランドと地続きの北アイルランド産品の輸出は、物の輸出額212億ポンド中32億ポンドと15.2%のシェアとなっており、北アイルランド産品の約36%がアイルランド向けに輸出されていると言われています。

ブリテン島とアイルランド島を結ぶ主要フェリー/RoRo船4ルート

そのような英国とアイルランドの間の物の貿易の主要ルートであるブリテン島とアイルランド島を結ぶ主要フェリー/RoRo船ルートは、主として図1の4ルートです。

図1:ブリテン島/アイルランド島主要海上ルートマップ

出所:日通総研作成

表1:ブリテン島/アイルランド島主要海上ルート

出所:日通総研作成

ご覧の通り、北の2ルートがスコットランドと北アイルランドを結ぶルートであり、南の2ルートがウェールズとアイルランドを結ぶルートになっています。スコットランド産品及びイングランド北部産品については北ルートを経て北アイルランドのCounty Antrim或いはBelfastでの陸揚げ後陸路で英愛国境を越えてアイルランド向けに輸出され、イングランド南部及びウェールズ産品については、南ルートで直接アイルランド向けに輸出されているのが現状です。

ノーディールBrexit後のアイルランド側の対応は?

前回も述べた通り、英国がEUに属している現時点においては、上述の4ルート何れを利用した場合であっても、英国産品についてはアイルランドにおいても国内産品と同様とみなされ、輸入手続きは行われておりません。しかし、ノーディールBrexitに至った場合には、EUメンバー国であるアイルランドにとって英国はEU外の第3国ということになり、英国産品に対しては輸入手続きを経る必要が出てきます。

上記4ルートのうち南の2ルートについては、英国発貨物であってもEU外のその他の国や地域発の貨物であっても、同じように港で輸入手続きを取れば良く、今までかからなかった当該手続きの手間と時間がかかり、それによる港での混雑が予想される等色々と問題はあるものの、対応方については比較的明確であると言えるでしょう。

しかしながら、北の2ルートを経てアイルランドに入る場合には、そう簡単ではありません。前回も述べた通り、英愛間の499kmの国境には208本の道路が交差しており、この国境を越えるタイミングでの輸入手続きは実質的に不可能です。

アイルランド政府は、2018年12月19日にノーディールBrexitに備えるための緊急対応計画を発表しましたが、その後本年1月に、当該プランが不十分と考えたEUの行政執行機関である欧州委員会が、英愛国境に関する具体的対応策を提示するようアイルランド政府に要求しました。その後凡そ半年を経た本年7月9日、アイルランド政府は、改訂版緊急対応計画を発表しました。

次回は、EUが英愛国境にこれほど拘る背景と、アイルランドの緊急対応計画の中身について具体的に述べ、そこにある根本的問題に触れて行きたいと思います。

この記事の著者

◆出身地:東京都中野区 ◆血液型:B型 ◆趣味:歌唱・楽器演奏・楽器蒐集・ポタリング・ウォーキング
1978 年 中央大学 法学部 政治学科 卒業
【得意分野】 複合輸送・ディストリビューションを中心とするグローバルロジスティクス

1983 年以来交互に日本とアメリカに住み、在米期間は通算で 17 年近くなりました。2008 年に帰国してからは、日通総合研究所で調査・研究・コンサルティング部門のマネジメントに従事しつつ、海外調査の時には日本と海外の輸送や物流の違いを見つけるように心がけています。とくに最近では、独自の発展を遂げてきた日本の輸送・物流のグローバル化の行く末に注目しています。日本では見られない輸送機器や荷役機器が動いているところを見ることと、各国各地の地元のローカルフードを食べることが何よりも楽しみです。

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