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アフリカスタートアップ企業の隆興と物流の未来(前編)

2019年8月末、第7回アフリカ開発会議が横浜で開催され、同時開催されたTICADビジネス・エクスポには152の企業・団体がブースを出展し大変な盛況となりました。今回のTICADはアフリカへの民間投資が促進されていましたが、現地のスタートアップ企業の活躍にも注目が集まりました。その中で物流・モビリティ分野で多くのスタートアップ企業の活動はあまり知られていないのではないでしょうか。今回は、アフリカ大陸内物流におけるスタートアップ企業の活動を通して、アフリカ大陸内の物流サービスの変化を紹介したいと思います。なお、今回は物流の範囲で活動するスタートアップ企業に焦点を当てます。

アフリカのスタートアップ企業への投資

欧米諸国のベンチャーキャピタルからのアフリカのスタートアップへの投資はここ数年で急増しています。WeeTrackerによると、2018年には725.6 百万USドルがスタートアップ、ベンチャー企業に投資され、その額は2017年比の3倍にもなりました。投資先はナイジェリア、南アフリカ、ケニアの3国で約7割(ディールベース)を占めており 、この中には物流スタートアップへの投資も含まれます。

物流スタートアップの登場

Brighter BridgesやJETROが発表している主な物流スタートアップの多くは、デジタル・ロジスティクス・プラットフォームを介した輸配送関連のサービスが多いようです。現在アフリカで活動している企業の活動を①コンテナ等の大口貨物輸送、②ラストマイル輸送、③付加価値の高い輸送、に分けられるのではないでしょうか。代表的な企業を以下いくつか紹介します(図1)。

図1:物流スタートアップの活動別主な企業

出所:JETRO, Brighter Bridges, 各社HPより日通総研作成業

まず、①コンテナや特定ロット単位で輸送されるBtoB貨物の輸送に特化したものが見られます。いずれもアプリ上のオンラインプラットフォームを活用して、荷主企業と登録している空きトラック・ドライバーを結びつける仕組みです。トラック版Uberとしばしば呼ばれます。彼らはローカル貨物だけでなく、隣国からのトランジット貨物も取扱います。そのため、輸送サービスに保険を付保するサービスも提供しています。Appを利用して貨物のトラッキングは勿論、運賃比較できることで輸送サービスの透明性も確保しています。企業例として、ナイジェリアのKobo360は一般貨物の他、農民からの農作物輸送用にもトラックが活用されています。Lori Systemsはバルクカーゴ、肥料、コンテナ(ローカル&トランジット)から消費財まで幅広く扱っています。トランジット貨物があることから、新たな拠点を次々に開設しています 。

一方、②「ラストマイル輸送」に特化したサービスもいくつも存在します。ナイジェリアのJUMIAがアフリカ最大のECとして大きく成長したことで有名なように、急速に発展したe-commerce(EC)により個人向け貨物が増えたことがラストマイル輸送のニーズを高めた要因の一つになりました。ローカル配送のアレンジが主なビジネスで、Sendyは様々な種類の貨物、国内配送に対応したプラットフォームです。また、固定住所のない荷受人へも配達手段を提供する点はアフリカのラストマイル輸送の特徴でもあり、MPOSTは携帯電話でバーチャル住所を発行して配達するという手法をとっています。

さらに、③付加価値輸送サービスも登場しました。例えば、Raino Tech4impactは農業や漁業のハーベストロス削減を目指し、農家からのファーストマイルから市場へのラストマイルまでのコールドチェーンシステムを提供しています。AroneはAppから医薬品を注文するとドローンで病院やクリニックへ15分程度で配送(国内の州間の輸送)するものです。
このように、交通インフラが整備されてもこれまで十分でなかった物流サービスが、デジタル・プラットフォームの活用や新たな技術の投入により、ビジネス向け貨物のみならず庶民や中小事業者も活用できる物流サービスが開発されたのです。

アフリカでの輸配送サービスの発展は日本の輸配送サービスとどう違うのでしょうか。大きな違いは貨物量です。物流事業はある程度の物量がないと経済性が生まれません。日本では段階的に貨物量が増え、それに合わせて物流サービスの開発、物流拠点が整備されました。そのため、物流ターミナルに物量を集め、集約混載しルート配送する仕組みを全国に敷けるだけの十分な物量があります。さらに、届け先住所が明確に存在することから、住所毎のエリア配送が可能となります。一方アフリカでは、ECの普及により急速に小口貨物が増加しました。ビジネス向けの貨物がこれまでもあったとはいえ、個人向け小口貨物は集約混載が可能な量には達していないと考えられます。そして、住所がない個人宅も存在することからエリア配送が困難となります。このような事情から、大手物流事業者によるシステマチックな集約混載・エリア配送が難しい状況で、個人の配送ニーズに応えるための仕組みが発展、受け入れられていると考えられます(図2)。

図2:日本とアフリカの輸配送サービスの違い

出所:日通総研作成

物流スタートアップ企業によって期待される効果

前回(「アフリカ物流事情と民間ビジネス機会」)、アフリカの物価高、高い物流コストについて説明しましたが、スタートアップ企業の活躍は物流コストの低減に寄与すると考えられます。少し古いですが、西アフリカの各港から内陸国都市へのロジスティクスコストの中身を比較したケーススタディーでは、港から目的地までの合計コストに占めるInland transport cost(陸送コスト)が35 %~50 %、加えて、貨物到着の時間が読めないことによる余計なhidden costが10%~20%にもなっていたそうです(World Bank, 2013)。トラック輸送は片荷輸送となることが多くその結果輸送コスト高に繋がってしまいますが、プラットフォームを利用することでトライバーは往復どちらも貨物を確保することが可能となります。また、通常アフリカの陸送アレンジでは荷主と荷受人の間に複数の仲介業者が介在し、各業者毎に手数料が発生するため妥当な最終コストが明確ではありません。プラットフォームでは事前に料金を明確にすることができるため輸送サービスの透明性が向上します。さらに、企業が輸送中の保険も提供することでhidden costも低減できると考えられます。

次回は、輸配送以外の物流サービスについてと、アフリカとアメリカ、日本の物流スタートアップ事業を比べてみたいと思います。

この記事の著者

◆出身地:埼玉県春日部市 ◆血液型:O 型 ◆趣味:ダンス、ジム
2004 年 東京外国語大学 外国語学部ポルトガル語専攻 卒業
2009 年 Teachers College, Columbia University MA(修士) in International Transcultural Studies 修了
【得意分野】交通貿易物流分野の政策策定、港湾政策、回廊開発

留学や仕事で世界中を8 年程うろうろして、日本に完全帰国して3 年経ちました。海外で外国人と仕事をすることに慣れてしまうと、日本人の働き方の特殊さに驚かされますが、やっと慣れてきました。若いうちにアフリカ等の開発途上国に住んで仕事をした経験は、物流の仕事に関わっていこう決意をするきっかけともなりました。交通インフラ、物流網が整備されてないことで、レタス1個10ドル、トマト6 個15ドルというような異常な国に住むと、物流や貿易コスト高が自分のお財布を直撃するので、身をもって物流の重要性を感じるわけです。また、海外で仕事をしていて日本人だと分かると、10 年程前は「日本はすごい国だよね」と言われることも多々ありましたが、昨今ではあまり言われなくなりました。私自身の経験から、新興国や開発途上国も含む海外から日本が学ぶことが多々あると思っています。そんな海外の経験を「輸入」しながら、クライアントのお役に立ちたいと考えております。

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