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北米航路(定期コンテナ船)の寄港数が減り続ける日本の港湾

北米航路(定期コンテナ船)の寄港数が減り続ける日本の港湾

去る3月14日、横浜港南本牧埠頭にメガコンテナ船運航船社のMSCが運航する世界最大級のコンテナ船(全長400m、20フィート換算で23,656本のコンテナを積載可能)が入港しました。このコンテナ船は、北米~アジア~欧州航路に就航していますが、2021年3月23日にスエズ運河で座礁したコンテナ船と全長は同じですから、船の大きさはイメージしてもらえるでしょう。
国が国際競争力のある港を実現するために「国際戦略港湾政策」を推し進めるなか、日本にも20,000本積みを超える大型船が寄港したのは感慨深いものがありますが、かと言えって北米航路における日本の港湾の地位が向上しているかと言えば、必ずしもそうではありません。そこで、本稿では、日本の港湾における北米航路の現状についてお話します。

定期コンテナ航路運航船社のアライアンス再編

近年、定期コンテナ航路を運航するメガキャリアにおいては、アライアンスの形成、再編が頻繁に行われていることから、まずはその変遷についてです。
現在、定期コンテナ航路を運航するメガキャリアには、2M、ザ・アライアンス、オーシャン・アライアンスの3つのアライアンスが形成されています。
そもそも、アライアンス形成の契機となったのは、コンテナ船の大型化に伴い1990年代後半にコンテナ船の船腹量が荷動きの伸びを上回ることとなり、以降、供給過剰の状態が顕著になったことです。このため、定期コンテナ航路運航船社は、コンテナ1本あたりの輸送コストが安価な大型船を有効活用しつつ航路網を充実させる観点から、北米、欧州、大西洋の基幹航路を中心にアライアンスを形成するようになりましたが、リーマンショック直後の輸送量が落ち込んだ時期においても、船舶の大型化、船腹量の増加は止まらなかったため、需給ギャップは一段と拡大することになりました。

定期コンテナ航路運航船社によるアライアンス形成の変遷

定期コンテナ航路運航船社によるアライアンス形成の変遷
出所)日本海事センター資料をもとに日通総研作成

このような状況を受け、2012年から2015年にかけ、G6、オーシャン・スリー、CKYHE、そしてそれまでアライアンスに参加していなかった船腹量1位のマースクと2位のMSCによる2Mの4つのアライアンスが形成されることになります。
しかし、この4アライアンス体制も長続きせず、並行的にM&Aの動きもみられたなか、再編がさらに進み、2017年には2Mとオーシャン・アライアンス(OA)、ザ・アライアンス(TA)に集約されることになりました。
なお、ザ・アライアンス結成に際し、日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船3社は、定期コンテナ船事業を統合したONEを設立しています。これもコンテナ船運航船社としての生き残り戦略と言えるでしょう。

日本からの北米向け輸出で利用できる航路は限定的に

この定期コンテナ航路運航船社によるアライアンスの再編は、日本の港湾にも影響を及ぼしています。
日本に寄港している北米航路は、2018年には16航路ありましたが、2020年は12航路にまで減少しています。(注:WEST WOODの航路とハワイ航路を除く。以下、同様。)
内訳をみると、北米航路のうちロサンゼルス港、タコマ港、バンクーバー港などとを結ぶ西岸航路は、2018年は15航路ありましたが、2020年は11航路となっています。また、パナマ運河を経由する東岸航路は、2013年の5航路から2018年には1航路に大幅減となり、2020年においても1航路のままとなっています。
また、日本に寄港する北米航路を国内の港湾別みると、航路数の減少傾向はさらに明確に現れています。
西航(北米→日本)は、2013年には延べ32の港湾に寄港していましたが、2018年は28港、2020年は20港にまで減少しています。
輸出で利用する東航(日本→北米)はさらに減少傾向が顕著であり、2013年は延べ22港湾に寄港していましたが、2018年は12港にほぼ半減し、さらに2020年は7港に減少しています。港湾別にみると、神戸港、横浜港は東航がわずか1航路、名古屋港も2航路となっています。

北米航路の寄港状況

北米航路の寄港状況
注)WESTWOODの西岸航路及びハワイ航路を除く
出所)「国際輸送ハンドブック」をもとに日通総研作成

このように、大規模港湾においても北米向け輸出におけるサービスレベルは、残念ながらかなり低下していると言わざるを得ないのが現状です。
そして、ここまで東航の寄港航路数が少なくなってくると、大規模港湾から輸出している荷主にとっても、北米向けにダイレクトに輸出できる選択肢が限られることになります。そのため、出荷日と寄港日のタイミングが合わないケースでは、リードタイム(輸送日数)は長くなりますが、釜山港など東アジア諸港経由による輸出も想定する必要性が高まってくるかもしれません。

港湾別にみた1週間あたりの北米航路寄港数の推移

港湾別にみた1週間あたりの北米航路寄港数の推移

注)・日本折り返しの航路については、寄港するすべての日本港湾において東航、西航の両方に航路数を計上
  ・WEST WOODの北米西岸航路及びハワイ航路を除く
出所)「国際輸送ハンドブック」をもとに日通総研作成

(この記事は2021年4月1日時点の情報をもとに書かれました。)

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