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サーキュラーエコノミーを物流視点で考えてみよう

サーキュラーエコノミーを物流視点で考えてみよう

サーキュラーエコノミー(循環経済)という言葉を頻繁に耳にするようになり、サステナビリティ実現の手段の一つ、という印象を思い浮かべる人がだいぶ増えてきたそうです。しかし読者の皆さんの中には、リサイクルやリユースと何が違うのだろう、と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。環境保全のためにごみを減らそう、モノを再利用しようというように、モノを中心にしたイメージをほとんどの方が連想するはずです。ですが、物流がなければサーキュラーエコノミーを社会的に実現することはできない、という風に考える方は少ないと思います。実は物流に関わる者にとってはとても興味深い社会現象で、ますます物流の重要性が高まる社会になることを意味します。今回は、製品目線だけでなく、あまり焦点が当たらない物流目線でサーキュラーエコノミーを考えてみたいと思います。

線形経済と循環経済の概念

最初に、サーキュラーエコノミーの概念を理解するには、これまで私たちが生活してきた経済を理解する必要があります。経済成長、企業活動を最優先させてきた20世紀は、大量生産大量消費の時代でした。「取る-作る―使う―捨てる」というプロセスに代表される経済は、リニアーエコノミー(線形経済)と言われ、一連の流れが一方通行の概念です。材料メーカーや製造企業は、消費者が捨てた後は基本的に気にしない、という社会です。しかし、地球温暖化による資源の枯渇懸念、資源価格の高騰、といった様々な要因により、大量生産大量消費モデルは機能しなくなりつつあります。昨今の世界情勢の不安定さによる資源の安定供給への不安も、経済にとってはさらなる脅威となっています。

図1:リニア―エコノミー(線形経済)
図1:リニア―エコノミー(線形経済)

(出所:NX総研作成)

そのような状況下で、既存リソースを有効活用しよう、原材料使用を極力抑えよう、資源の無駄使いをなくそうという動きが最近では顕著になりました。日本では脱プラスチックの動きとして、商品包装のプラスチック使用量を減らすメーカーが多く出ています。「原材料の使用と廃棄物排出をできる限り抑制しながら、既存の製品や材料を何度も何度も最大限再利用しようという経済」がサーキュラーエコノミーの基本的な概念です。実は、この循環性(Circularity)の考え方によって複数の考え方があるため、世界共通のサーキュラーエコノミーの唯一の定義はまだありません。そのため、まだ発展途上の概念であるとも言えます。究極には廃棄物をほぼ排出せず、投入した資源が循環し続ける経済がサーキュラーエコノミーだとする考えもあります。

図2:サーキュラーエコノミー(循環経済)
図2:サーキュラーエコノミー(循環経済)

(出所:各種定義を元にNX総研作成)

取り組み状況

では、この概念について世界ではどのような取り組みが進んでいるのでしょう。例えば、2016年にオランダ政府は、「2050年までにサーキュラーエコノミーを実現する」と発表しました。その内容は、可能な限り使用や消費を最小限にし、資源材料の再利用を最大化する、長く使える製品を開発しその生産をよりスマートにする、製品を共有譲渡することでより賢く使うことで実現するとしています。また、欧州委員会(EC)は、2015年にサーキュラーエコノミー・パッケージとして、関連の政策・ルール整備の方向性を発表、2020年にはサーキュラーエコノミー推進に向けた新たな行動計画を発表しており、具体的な施策が既に打ち出されています1

一方日本では、1999年に「循環経済ビジョン」が示され、3R推進を中心に取り組まれてきました。そして2020年、経済産業省が「循環経済ビジョン2020」を発表し、循環経済への転換に向けた対応の方向性を示しました2。99年はより環境活動としての3R(リデュース・リユース・リサイクル)という認識でしたが、新たなビジョンでは、経済活動として循環経済を実現していくため企業の自主的取り組みを推進するとしています。動脈産業と静脈産業の連携による循環性の高いビジネスモデルへの転換を目指し、関係主体(静脈産業、投資家、消費者)の役割が重要だという理念を明確にしましたが、具体的な目標設定を行ったわけではありません。

循環経済への移行に関する取り組みは国ごとに差がありますが、経済活動においてどれくらいの資源が世界的に再利用されているのかを示す指標があります。オランダにあるサーキュラーエコノミー推進機関のCircle Economyは、2018年から「サーキュラリティ・ギャップ・レポート」を発行しています。2018年の同レポートでは世界経済のサーキュラリティ(循環性)は9.1 %でしたが、2020年には8.6 %に後退したと報告されました。また、最新のレポート3では、気候変動を抑制するためにも、サーキュラリティーを2030年までに17%に押し上げる必要があると述べています。

サーキュラーエコノミーの全体像

サーキュラーエコノミーの3つの原理

上記の通りサーキュラーエコノミーの定義は様々ですが、英国に本拠を置くサーキュラーエコノミー推進機関エレン・マッカーサー財団はサーキュラーエコノミーを「枠組み」と捉えて、以下の様に説明しています4

“サーキュラーエコノミーとはシステムソリューションの枠組みであり、気候変動、生物多様性、廃棄物や汚染といったグローバル課題に取り組むための枠組みである。”

そして、サーキュラーエコノミーは3つの原則に基づき、全てデザインによってもたらされるとされています。

  • ①Eliminate(排除する:廃棄や汚染を取り除く)
  • ②Circulate(循環する:製品と原材料を(高い価値を保ったまま)循環させつづける)・
  • ③Regenerate(再生する:自然を再生する)

バタフライダイアグラム

同財団は、上記3原則に基づいた通称「バタフライダイアグラム」と呼ばれているサーキュラーエコノミーシステムを体現した図を公表しています(図3)。生物学的サイクル(Biological cycles) と技術サイクル(Technical cycles)があります。前者は木材や綿、食品などの消費を前提とした生物資源のサイクルで、自然界の資源再生の流れを示しています。生物圏を通じた循環で環境に価値を与えるため、自然界に悪影響を与える物質や素材が含まれていないことが前提で成り立つサイクルです。後者は、鉄やアルミニウム、プラスチックなど枯渇性のある技術資源のサイクルで、生物圏には戻らず、システム内で何度も循環する資源と製品のストック管理を示します。ダイアグラムの詳細はエレン・マッカーサーのウェブサイトで学ぶことができます。

この図内のループ(輪)は、内側のサイクルのループであるほど製品の価値を保ち続けることができ、資源あたりの生産性を高めることができます。つまり、製品やパーツレベルでループをクローズすると、材料レベルでループを閉じるよりも価値を生む可能性があるのです。技術サイクル内には、共有、維持・長寿命化、再利用、再製造、リサイクルのループがありますが、リサイクルが最も外側のループです。リサイクルは元の製品の価値を維持するわけではないため、最後の手段としての循環と捉えられます。このことからも、サーキュラーエコノミーの実現は日本でなじみ深いリサイクルの概念以上に挑戦的な考えだということが分かると思います。

図3:バタフライダイアグラム
図3:バタフライダイアグラム

(出所:エレン・マッカーサー財団5から抜粋、CE hubウェブサイト6参照)

ここまで製品を中心に見てきましたが、少し物流目線で見てみましょう。技術サイクル内のいずれのサイクルにも生産者と消費者・ユーザーの間に幾重にもループ(輪)が存在するため、それらのループを閉じるために製品を消費者・ユーザーに届ける動脈物流と、製品を製造者等に戻す静脈物流が存在しています。特に、静脈物流なくしてはこれらループを閉じることができません。

静脈物流(リバースロジスティクス)の発展

静脈物流(リバースロジスティクス)というと「返品物流」をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、サーキュラーエコノミーにおける静脈物流は、単なる返品ではもちろんありません。動脈物流に対する認識も時を経て変化してきたものですので、まず静脈物流の概念の発展を振り返ってみます。

かねてから物流は動脈物流・静脈物流として区分され、静脈物流は廃棄物となるもの、損傷・期限切れ・誤配などによって製品が通常のロジスティックスと逆方向に移動する事を指しており、基本的には価値のなくなったもの、低価値の物を扱う物流(回収物流、返品物流、廃棄物物流)でした。そのため、環境問題目線では認識されてはいませんでした7

1992年、アメリカのJames R.Stock教授が提唱した「リバースロジスティクス」は単なる製品の逆流ではありませんでした。同教授は、素材の代替・再使用、廃棄物処理方法の見直し、修理による製品の再利用、解体部品の再生による製造などへ視野を拡大し、3R(リデュース・リユース・リサイクル)実現に寄与する「還流ロジスティックス」として、システム化、運用するべきだと主張しました。ここから、環境問題への取組みとして静脈物流も注目され始めました。
 
そして、昨今ではこれまで以上に環境問題への関心が高まり、静脈物流の考え方もさらに進化、「循環型社会を実現するための物流」というとらえ方が出てきました。かつてはサプライチェーン上コストがかかるものでしかなかった静脈物流は、製品の返品や回収・再加工を経て、単純に処分するだけでなく2次マーケットで再販売を行うことを想定した物流という考え方に拡大しています。現在の静脈物流は、新たな価値を創出するためのビジネスプロセスという側面を持っていると言えます8

ビジネスプロセス

バタフライダイアグラム内の各ループを閉じるために、企業は「3つのビジネスプロセス―①収集、②再加工、③再流通」を実践することが不可欠となりますが、静脈物流はこのうちの収集でその重要な役割を果たしていると言えます。再加工や再流通は主に生産者側のプロセスですが、収集がない限り成り立ちません。それだけ静脈物物流が重要なわけです。各プロセスを簡単に見てみましょう。

①収集:製品や材料について適切な量を適切な品質状態を保って、かつ手ごろな価格で集める

製品や資源を循環させるには、相応の物量を収集する必要があります。世界的にも製造した企業による収集はまだまだ十分ではありません。日本でも、収集は自治体によって行われることが多く、企業による自社製品のリサイクル目的の回収はまだ効率よく行われているとは言えません。例えば、家庭用インクカートリッジの使用済カートリッジ回収率は10%以下だそうです9。3Rが各種リサイクル法に従う形で推進されたので、日本の消費者や企業のマインドではリサイクルは自治体が行うもの、という考えが強いことも影響しているのかもしれません。しかしここ数年では、衣料品メーカーが店舗で古着を回収する取り組みも出てきました。

②再加工(再整備・再製造):使用済の中古製品や材料の整備や再製造、中古の製品や材料のリサイクルを手ごろな価格で行う

プロダクトの製造企業や、再加工を専門に行う企業がこのプロセスを担います。中古のスマートフォンや中古PCは以前からある例で、スマートフォン製造企業以外の事業者が再整備を行うことも多々あります。また、フィリップス社のリファービッシュビジネス10に見られるように、医療機器業界では、新品のように整備、アップデートするリファービッシュ(再整備)は盛んです。中古の自社製品を自社で整備後、安価に再販する体制が他業界よりも進んでいます。一方、最近ではアップサイクル(今あるものを利用して別用途の製品に作り替え、付加価値を与えること)を専門に行う企業が、自社製品ではないものを使用して新たな製品を生み出し販売する例が見られますが、いずれもまだ小規模なものが多いです。

③再流通:再加工された製品や材料が欲しいという市場を特定する

医療機器メーカーやアップサイクルの例は自社で再流通体制、市場を把握している例ですが、製造企業が自社の整備品や再生品(つまり中古品扱い)を大々的に販売している、という例はまだ少ないのではないでしょうか。新品をより多く売ることを最優先とする線形経済では、新しいものを売ることが企業の使命ですので、②と③を異なる企業が担当する、という構図になってしまっています。それゆえ、現状ではリサイクル品はリサイクルショップや、整備品を専門に扱う企業が、再加工品の流通の役目を担うことが多くなります。

サーキュラーエコノミーが作り出すビジネス価値

上記3つのビジネスプロセスすべてを製造者である企業が実践する場合、4つのビジネス価値を得ることができるとされています。利益を出さねばならない企業の目線で言い換えれば、サーキュラーエコノミービジネスを成功させるには価値の創出が必須だということです。

図4:4つのビジネス価値の考え方
図4:4つのビジネス価値の考え方

(出所: “Circular Economy: An Introduction” ,Delft University of Technology by edX)

このような価値が生まれるにもかかわらず、前述3つのビジネスプロセスを実践している製造企業の数はまだまだ限定的で、ビジネスプロセスの実践を自治体や製造企業当事者以外の事業者に頼っているのが現状です。なぜなのでしょうか。製造企業が3つのビジネスプロセスへの取り組みに消極的な要因の一部として、①上記のビジネス価値を見出せておらず、新品製品が売れなくなるという懸念(企業側の問題)、②再加工品や再生産された商品は品質が劣るという誤解(消費者側の問題、)③再生品(整備品)・再生材料に関連する様々な障壁(例:再輸出等)(法規制の問題)、が挙げられます。しかし、そもそも自社製品の回収が容易ではないことで、その先の再加工や再流通の話まで進まないのではないでしょうか。ある程度の物量の製品が適切な質で回収できなければ、4つのビジネス価値を生み出すこともできず、その結果、再加工や再流通も考えられないということになります。

サーキュラーエコノミーにおける回収の重要さ

製品を回収するために、製造企業は回収率を高める試みを行っています。デポジット(預け金)システムや、返却後にクーポンが発行される等、いずれも金銭的なインセンティブを消費者に付与することで、消費者に回収意識をもってもらうことができます。以下のその仕組みの一例です。

デポジットシステム(ドイツ):ドイツではスーパーなどで、リターナブル容器とワンウェイ容器を回収時にデポジットを返却する仕組み。リターナブル容器は飲料業界が自主的にデポジットシステムを導入、消費者が空容器を持ち込むと、容器の種類別に5円~20円程度のデポジットが返却される。ワンウェイ容器については、国が法的に容器の製造・販売に関わる事業者に回収・分別の責任を負わせ、デポジットシステムを強制的に導入、大容量容器は30円程度、小容量容器はデポジットなしで回収11。このような回収を支援するため、小売店に設置する自販機型の回収ポストを開発する企業もいる12

化粧品業界の容器回収キャンペーン(日本):店頭に洗浄した空容器を持ち込むと、物品交換やポイント付与、割引などの特典がある。例:「ラッシュ」では空容器5個とフェイスマスクと交換、「ロクシタン」では1回の持ち込につき50ポイント付与、「エヌオーガニック」では他ブランドを含む使用済み化粧品容器の回収を開始、参加者に500円クーポンを配布13

空容器回収プログラムを開始する企業が多数出てきましたが、各ブランドの店頭でのみの回収という場合も多いようです。しかし、回収場所(店舗)が近くにないので返却しようと思わない、という消費者は、筆者も含めかなりいると思います。回収場所の課題を解決するために、製造企業が物流事業者と組んで取り組む例があります。アメリカの物流事業者UPS社と米国ネスプレッソ社は、使用済のコーヒーカプセルの回収で協業し、リサイクルプログラムを展開しています。ユーザーは、使用済カプセルを購入時に店舗で受け取るプリペイド式のバッグにいれて、回収ポイントにあるポストに返却するだけです。圧倒的多数の拠点を持つ物流事業者が回収ポイントを提供することで、ユーザーが返却しやすい環境を作り出しています。その一方で、製造者であるネスプレッソは、再加工、再流通に注力できます。このように、物流事業者が3つのビジネスプロセスの一部の役割を担うことで、静脈物流を含めた「循環サプライチェーン」を形成しやすくなります。

図5:ネスプレッソのリサイクルプログラム
図5:ネスプレッソのリサイクルプログラム

(出所:UPSウェブサイト14を基にNX総研作成)

上記の例は、物流事業者が回収場所の提供で関与していますが、製造企業と一緒にサプライチェーン全体の再考を鼓舞するために、物流事業者は組織的に製造企業(荷主)ともっと組織的に動き始めるべきだと、いう主張がオランダではかねてからあります15。動脈物流だけでなく静脈物流を含めた効率的な循環サプライチェーン全体を構築するには、物流事業者の知見と関与は不可欠だと思います。

サーキュラーエコノミーに貢献するビジネスモデルの変化

回収が思うように進まない大きな原因は、製品の所有権が消費者・ユーザーにあるからだと言えます。製造企業は所有者から無理やり製品を取り上げることはできません。しかし、所有権が生産者側にあれば、確実に回収できる環境が生まれます。最近流行りの様々なシェアリングサービスは、Product as a Service(PaaS:製品のサービス化)という言葉で説明されるように、「モノを売るモデル」から「モノの代わりにサービスを売るモデル」を体現したビジネスです。サービスを売るモデルには、特定の製品が関与してユーザーがサービスを受ける場合と、製品を特定せずユーザーが期待するパフォーマンスに合意する場合があり、ここ数年で増えたシェアリングサービスは前者の「利用志向モデル」が多いようです。

図6:3つのビジネスモデルの違い
図6:3つのビジネスモデルの違い

(出所: “Circular Economy: An Introduction”, Delft University of Technology by edXにNX総研追記)

サービスを売るモデルを活用して所有権を製造企業(もしくは製品を提供する企業)に残すことで、使いきった製品を100%再加工、再流通させることが可能になります。シェアリングビジネスモデルが先か、サーキュラーエコノミー促進が先かは鶏卵的な議論ですが、両方が両輪として機能すれば、急速に「循環」が進む可能性があります。製品志向モデルでは前述のようにユーザーからの回収が重要になりますが、利用志向モデルでは、製品所有者とユーザー間で製品の確実な往復が重要になります。この往復に物流事業者は配送で関与することも多々ありますので、いずれのモデルでも物流事業者は重要な役目を果たしています。


循環性を意識したPaaSの事例

【事例1:水素燃料車のサブスクリプションサービス(Riversimple社、英国)】16
水素燃料電池電気自動車メーカーである同社が提供する車両のサブスクリプションサービスでは、車両の所有権はRiversimple社が保有しつつ、使用者は固定の月額料金と変動マイレージ料金で構成される単一金額を支払う。サブスクリプションの支払いは、関連する全てのランニングコスト(包括的な保険カバー、法定検査およびメンテナンス、故障と回復、税金と登録、燃料、車両とコンポーネントの摩耗)を含む。

同社では無駄をなくすことを目的とした循環モデルを採用している。車両の寿命を極力長持ちさせるため、可能な限り頑丈に製造される。高い品質の部材を使うことで長年にわたり運用コストを節約、そのような部材にかかる高額な費用は車両のライフタイム全体で償却するので、最初から運用コストを節約でき手ごろな価格で提供可能となっている。循環性が同社のオペレーションの中心である。車両の寿命が尽きた時には、可能な限り多くの部品や材料を回収することが保証でき、重要な材料と資源を循環させることが可能となる。

【事例2:Blue Movement:家電サブスクリプション (BSH Hausgeräteグループ、オランダ)】 17
BSHグループのブランドであるBlueMovementは、月額固定料金でBosh社の電化製品をレンタルできるサービスを提供。 BlueMovementは電化製品の所有者であり、サブスクリプション料金内で設置、修理、交換、およびメンテナンスを提供。全ての電化製品はエネルギー効率が高く、寿命が尽きた後、製品は部品や原材料の再利用のためにBlueMovementに戻される。

【事例3: CLAS:家具サブスクリプション(株式会社クラス、日本)】 18
CLASは月額440円(税込)から利用できる、家具のサブスクリプションサービスで、個人向け、法人向けあり。ソファやベッド、チェアといった家具のほか、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジといった家電を取り扱う。必要な期間だけ必要な商品を借りられるが、長く使うほど支払う価格が安くなる仕組みも用意し、サブスクリプションというシステムであっても消費者が長期間使いやすいようなインセンティブを提供する。家具の売り切りモデルだと、自宅やオフィスの引っ越しの際に廃棄される場合が多いが、同サービスは家具の所有権はサービス提供者側にあるので、サービス提供者は修理やクリーニングなどによって、その製品を長持ちさせることが、利益率向上につながる。商品数増加に向けて、物流施設を持つ日本GLPグループとも連携している。

まとめ

現在の日本では、サーキュラーエコノミーの文脈でよく議論される内容は、脱プラスチックや使用資源の減量についてが多いように見えます。そして、製品の製造者の視点で述べられており、製品そのものに注目されることが多いと思います。使用資源の減量はサーキュラーエコノミーの重要な一部ではありますが、「資源を循環させる」までを含めてサーキュラーエコノミーです。循環という視点は、製造企業が今後さらに力を入れていく領域です。そのため、「消費者が使用後の製品」に企業が関与することが重要となり、既に回収活動を始めている企業も出てきています。「使用後」に関与するには、回収や再流通の過程で必然的に物流に向き合うことになります。

これまでのサプライチェーンは、デザイン、生産、販売、物流、回収、再利用、再流通が全てバラバラの社内プレーヤーや別企業で行われる分業体制で出来上がっていました。使用資材の減量や、より長持ちし再生しやすい製品の開発は製造企業のみでもできますが、回収しやすい製品か、どこで回収するか等は製造企業のみの知見では不十分です。今後のサーキュラーエコノミーの発展には、法規制による国や自治体による取り組み中心から、企業による自主的なアクションが期待されています。このような中で、製造者、物流事業者を含むサプライチェーン上の多様なプレーヤーが協働し、知恵を出し合って新たな循環サプライチェーンを確立していくことを期待したいと思います。

(この記事は2022年3月20日の情報をもとに書かれました。)


(基本の参考資料)
■社会をもっとよくする世界のアイディアマガジンIDEAS FOR GOOD
“Circular Economy: An Introduction” , Delft University of Technology by edX
エレン・マッカーサー財団ウェブサイト

  1. https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/technology-driven/technology-lab-insight09.html
  2. 経済産業省「循環経済ビジョン2020」
  3. 「The Circularity Gap Report 2022, Circle Economy」
  4. https://ellenmacarthurfoundation.org/topics/circular-economy-introduction/overview
  5. https://ellenmacarthurfoundation.org/circular-economy-diagram
  6. https://cehub.jp/learning/circular-economy-hub-learning-3/
  7. https://reduction-t.com/column/column-862/
  8. https://smartdrivemagazine.jp/glossary/reverselogistics/
  9. 品川区家庭用の使用済みインクカートリッジ里帰りプロジェクト
  10. https://www.philips.com/a-w/about/environmental-social-governance/environmental/circular-economy/circular-products-and-services
  11. https://organic-press.com/column/kohgi_column_vol34/
  12. ソーティング技術を持つドイツ企業TOMRA
  13. https://www.fashionsnap.com/article/recycle-cosmetic/#%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5
  14. https://about.ups.com/us/en/social-impact/environment/circular-economy/ups-helps-nespresso-recycle.html
  15. “Towards a Circular Economy: The Role of Dutch Logistics Industries and Governments”; Sustainability 2016, 8, 647.
  16. https://www.riversimple.com/riversimple-business-model/#riversimplespurpose
    https://www.riversimple.com/wp-content/uploads/2021/02/Circular-Revolution-Press-Release-Final.English.pdf
  17. https://www.sitra.fi/en/cases/home-appliances-as-a-service-to-promote-reuse-repair-and-extended-lifecycles/
    https://www.bluemovement.com/nl-en
  18. https://cehub.jp/interview/clas-circular-economy-paas/
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000121.000033987.html

この記事の著者

◆出身地:埼玉県春日部市 ◆血液型:O 型 ◆趣味:ダンス、ジム
2004 年 東京外国語大学 外国語学部ポルトガル語専攻 卒業
2009 年 Teachers College, Columbia University MA(修士) in International Transcultural Studies 修了
【得意分野】交通貿易物流分野の政策策定、港湾政策、回廊開発

留学や仕事で世界中を8 年程うろうろして、日本に完全帰国して3 年経ちました。海外で外国人と仕事をすることに慣れてしまうと、日本人の働き方の特殊さに驚かされますが、やっと慣れてきました。若いうちにアフリカ等の開発途上国に住んで仕事をした経験は、物流の仕事に関わっていこう決意をするきっかけともなりました。交通インフラ、物流網が整備されてないことで、レタス1個10ドル、トマト6 個15ドルというような異常な国に住むと、物流や貿易コスト高が自分のお財布を直撃するので、身をもって物流の重要性を感じるわけです。また、海外で仕事をしていて日本人だと分かると、10 年程前は「日本はすごい国だよね」と言われることも多々ありましたが、昨今ではあまり言われなくなりました。私自身の経験から、新興国や開発途上国も含む海外から日本が学ぶことが多々あると思っています。そんな海外の経験を「輸入」しながら、クライアントのお役に立ちたいと考えております。

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