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物流オペレーションを「大づかみ」するための4つの視点

物流オペレーションを「大づかみ」するための4つの視点

物流コンサルタントや3PLのソリューション営業といった、業種を問わず様々な物流オペレーション企画等に関わる仕事においては、対象となる物流オペレーションの概要を即座に把握し、検討を開始する必要があります。一般化するには中々難しいですが、それを承知の上で、試みとして物流オペレーションをいわば「大づかみ」するための視点を4つに纏めてみたいと思います。

1.商品単価

正しくは「単位体積および重量あたりの価格」というのが適切かもしれません。同じサイズで同じ重さの「金の延べ棒」と「チョコレート」を例に取ります。入庫、ピッキング、梱包といった作業費、保管や倉庫オペレーションを行うのに必要な家賃、出荷後の輸送費まで、かかるコストは同じです。このように物流費は同じですが、商品単価が異なると、売上高に対する物流費の比率がそれに反比例して変わることとなります。これに伴い企業における物流費の持つインパクトや、それに対する取組みのシビアさが変わってきます。
高額な商品を扱う場合は、そうでない場合に比べ売上高に対する物流費の比率が低いため、たとえば時給や坪単価が高い都心に物流拠点を構えるようなプランが許容されることも考えられますが、安価な商品を扱う場合は、緊急出荷等の特殊な要件でもない限り、経営へのインパクトの観点から、到底そのようなプランは採用され得ません。

2.保管管理レベル

保管管理レベルは、大きく物理的なものと、個体やロットに関するものの2つに大別できるでしょう。
物理的な管理の例としては、温度管理、危険品管理といったものが挙げられます。取扱い商品の特性上このような管理を求められる場合は、空調設備の導入や危険品倉庫等の利用等が必要ない場合に比べ、大規模な工事に伴う投資や、管理コストを含むランニングコストがかかることとなります。
個体やロットの管理は、医療機器や精密機器において求められる場合がよくあります。多くの一般消費者向け商材を扱うオペレーションで必要とされるJANや品番等、商品を特定するコードでの管理に加え、個体のシリアル番号や賞味期限・使用期限などの管理が必要となります。これはWMS(Warehouse Management System)の開発費や、倉庫内オペレーションコストに影響し、必要ない場合に比べコスト増の方向に働きます。

3.入荷元

商品が倉庫にどこから入荷されるかですが、着目すべきは、対象の物流拠点と、入荷元の企業や拠点との間の力関係です。
入荷元の企業や拠点を、対象の物流拠点(またはその企業)が優位となる順に並べると、他社(メーカーなどの仕入先)、自社の委託工場、自社(自社工場、他拠点など)となります。
他社からの入荷において、自社が顧客である場合は、基本的に自社の要望に即した入荷形態や品質を要請できるため、オペレーションは比較的容易に簡素化、高品質化することができます(勿論その仕入先が強力なブランドであったり、やキラーアイテムを販売したりしている場合は、その限りではありませんが)。
一方入荷元が自社工場や別拠点の場合は、その企業次第です。問題が発生しても企業内で解決できるものであるため、入荷の数量精度や品質が低くなり、入荷オペレーションや在庫管理が煩雑になる可能性もあります。力関係という観点では、海外企業から日本法人の物流拠点に入荷される場合などは、本国の意向に従う以外にないような場合もあるでしょう。しかし企業内サプライチェーンにおいて、自社工場等への統制を最も強化することのできる形態でもあるため、入荷カートンのサイズを統一したり、RFIDを取付けたりといったドラスティックな物流オペレーション上の施策を討つことができるのもこのケースです。

4.出荷先

出荷先を大きく分けると、BtoB(小売業者等、他社向け)、BtoB(自社店舗等、自社向け)、BtoC(主にEC)となります。各々において求められる出荷サービスレベルが異なり、概ね高い順に、BtoC、BtoB(他社向け)、BtoB(自社向け)となります。
BtoC出荷は、BtoB出荷に比べ、そもそも出荷アイテムが多様で受注あたりの出荷点数が少ない場合が多いため、出荷作業の生産性が低く、売上に対する輸送費の比率も高くなる傾向があります。また不特定多数の一般消費者に向けての出荷で競争も激しいため、高い出荷品質レベルを求められ、出荷検品工程等に工数を要することとなります。受注から出荷、配送までのリードタイムも短縮する必要があります。さらにカスタマーサービス、返品といった付帯的な業務にも多大なリソースを要します。
BtoB(他社向け)出荷は、前章で示した他社からの入荷に相当しますが、顧客企業の要望に沿った出荷を行う必要があるため、BtoC出荷ほどではなくとも、サービスレベルは相応に高いものが求められます。代表例として、小売事業者毎にユニークな専用値札の取付けや店舗別仕分けなどの顧客事業者向け付帯作業の発生が挙げられます。また取引関係にあるため、出荷検品作業等に工数をかける必要があります。
BtoB(自社向け)出荷は、前章の自社からの入荷に相当し、自社内でサービスレベルの調整は可能ですが、その企業の統制次第となります。
補足までに、出荷先に類する重要な物流オペレーションの概要把握の視点として、受注から配送までのリードタイムを挙げておきます。特にスペアパーツの出荷等においては、社会インフラの復旧等のため、受注後数時間内に届けることが求められるケースがあり、出荷先のロケーションの近隣に物流拠点を配置し、自社便による配送等の検討が必要となります。

以上に物流オペレーションを「大づかみ」するための視点を4つに纏めてみました。これに当てはまらないケースや、その他の重要な視点もあるかもしれませんが、少なくとも上記の視点から見ることで、物流オペレーションの概要把握は容易になると思います。

(この記事は2023年10月24日の状況をもとに書かれました。)

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