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リテールテックと物流~【5】最終的にはやはり「予測」がカギ

リテールテックと物流~【5】最終的にはやはり「予測」がカギ

これまで4回に渡ってリテールテックの状況を見てきましたが、物流業界にとっては何を気にしておかなければならないでしょうか? 短期的、オペレーション的にはこれまでとあまり変わらないような気がしています。物流側からみると「商品を適宜配送・補充する」という役割ですが、これは有人店舗であろうが無人店舗であろうが変わりません。しかし「補充を発注する行為」まで無人化・自動化されると、配送の少量多頻度化が起こります。ジャストインタイムでの納入で販売機会のロスを防ぎ、売上拡大と販売効率を上げるインセンティブが働くからです。物流側から「今でも大変なのに無理…」という声が聞こえてきそうです。

これまではカメラを使った認識技術を使って「店舗の無人化」と「チェックアウト(レジ)無し化」を考察してきましたが、認識技術による利点は「無人化」「レジ無し化」だけではありません。実はもっと重要なポイントがあります。来店客の「購買行為のデジタル化」ができるのです。

例えば来店客があるスーパーで買い物をします。設置されたカメラは客の一挙一動を記録し、「なぜある特定の銘柄のビールをとったのか」、「何を買ったから、それに合わせて何を買ったのか(例:ワインとカマンベールチーズ)」、「買い物中にどんな放送やポップがあれば客はどんな行動を起こしやすいか」などのデータを蓄積していきます。それらのデータを分析することで、客の行動を分析し、売上拡大を狙う戦術を取るのです。

「今でもそんなことはやっている」「経験あるリテーラーならどういった組み合わせが売れやすいかの傾向もつかんでいる」と良く言われます。そうなんです。リテールテックという新語を使っているから“何かスゴイこと”をやっているように見えますが、実は新しい技術で達成しようとしていることは今(アナログ)と変わらず、売上拡大、販売効率向上、販売機会のロス削減、なのです。では「デジタル化する」ことは一体何が“スゴイ”のでしょうか?

まず画像認識技術の話をすると「来店客が買わなかった商品、比較した商品」がわかるのです。バーコードやRFIDの技術でも「最終的に売れたもの」は分かるのですが、どうして売れたか、何と比べたか、ポップやタイムセールの放送が効いたのか、などは分かりません。一挙一動をみているから成し得る情報です。当たり前ですが店員がある来客者を店内にいるあいだ追いかけてどんな行動をしているか観察しつづけることはまず不可能です。また客自身が商品をスキャンする自動レジでも「無人化」は達成可能ですが「購買行為のデジタル化」はカメラを使った認識技術でないと出来ないのです。

オンライン・ショッピングの世界では「購買行為のデジタル化」はもうとっくに行われています。皆さんがアマゾンや楽天で買い物をする際、いくつかの類似商品をみて最終的にAを買った、カートには入れたけど結局買わなかった、買うまでのどんなページに何分くらいいた、などは全てデジタル情報として分かっています。またウェブサーフィン中、どのページを見る客は、どの広告を出したらクリックしてくれるか、などスーパーでの「マグロのタイムセール」のような行為もオンライン上では頻繁に行われています。リテールテックはオンライン上でやっていることを、リアルの買い物行為にも適用することを可能にする技術なのです。

繰り返しになりますが「購買行為のデジタル化」によって達成されるのは、今も将来もオンラインでもリアルでも同じで、「売上の最大化、販売効率の向上、販売機会ロスの削減」などです。しかしリテールテックがスゴイのは、これまで勘と経験で店舗の販売戦術を組んできたリテール産業に、圧倒的なデータ量(ビッグデータ)と圧倒的な速さ(リアルタイム)で圧倒的な効率化を図り、既存のプレーヤーを出し抜いて勝ち残る武器を得ることなのです。

圧倒的なデータ量(ビッグデータ)と圧倒的な速さ(リアルタイム)で圧倒的な効率化を図るには「人工知能(AI)」の活用が必須になります。

  • ①データを取得する(カメラで購買行為を撮影)
  • ②データを分析・予測する(AI活用)
  • ③分析結果をリアルタイムで反映する(売り物、売り方、配置、プロモなど)
  • ④上記①~③を繰り返す

上記①~④を繰り返すことにより、売れるものを適量仕入れる、売れないものは仕入れない、売れるタイミングに商品が用意できている、無駄な在庫は持たない、と無駄を徹底的に省いてサプライチェーンを圧倒的に短くし、収益に貢献する。アナログとは桁違いの速さとデータ量、しかもAIに活用により「予測」することによりデータの精度を上げていく。これが最先端技術を駆使する未来のリテーラーの姿です。

「ビックデータ」「リアルタイム」「AI」「予測」「サプライチェーンの圧倒的な短縮」、これらのキーワードは筆者や当社コンサルタントがいつも物流業界のクライアントにご説明している「物流のデジタル化」と全く同じです。リテールテックは小売業界だけでなく卸やメーカーも巻き込みますし、当然サプライチェーンに含まれる物流業界にも影響します。では物流業界としては中長期的にどう対応すべきでしょうか? 唯一の答えは「デジタル化に付いていく」以外にあり得ません。

ブロックチェーン技術の物流分野での活用状況

この記事の著者

◆出身地:福岡県福岡市 ◆血液型:B 型 ◆趣味:ラグビー観戦、ランニング、旅行、酒
1993 年 早稲田大学 教育学部 英語英文学科 卒業
2001 年 University of Washington, Foster School of Business 修了 (MBA)
【得意分野】 新規事業の企画および立ち上げ、海外進出、国際交渉

iPhone に「been」という、これまで行ったことがある国を世界地図上で示すアプリがあります。社会人になってから 20 年強ずっと国際関連の仕事をしており、2009 年に当社に入社してからも海外調査や取材等で年間四分の一は海外出張という生活だったので、だいぶ地図も埋まるかな~と期待していたら、全世界のたったの 14%(32 ヶ国)しか行ってないことが判明しました。「あれだけエコノミークラスで長い時間を過ごしても 14%か…」と多少落胆しましたが、同じ国に何度行っても“1 つ”としかカウントされないのでしょうがないか。しかし、いつものハードでバタバタのビジネス出張ではなく、ゆったりしたプライベート旅行で「been」の地図を埋めていきたいものです。無料のアプリなので、興味のある方は試してみて下さい。

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