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運輸業でテレワークは可能か?

運輸業でテレワークは可能か?

テレワークとは?

2018年6月29日にいわゆる働き方改革関連法(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が成立し、2019年4月1日より施行されます。同法は、労働者がそれぞれの事情に合わせた働き方ができる社会を実現するため、長時間労働の是正や、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保などのための措置を講じています。具体的には、時間外労働の上限規制の強化(ただし、自動車の運転業務については適用まで5年間の適用猶予があります)、勤務間インターバル制度の普及促進、年次有給休暇取得の義務化(最低5日)などが含まれており、「多様で柔軟な働き方の実現」を目指しています。その「多様で柔軟な働き方」の一つに挙げられ、話題となっているのが「テレワーク」ですが、そもそも現場のある運輸業ではテレワークが可能なのでしょうか。

「テレワーク」とは、Tele(離れたところで)とWork(働く)をあわせた造語で、情報通信技術(ICT)を活用し、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方のことを表します。
分かりやすく言うと、「会社に出社せず、自宅やカフェなどで、好きな時間に仕事をしてOK」というやつです(もちろん仕事の成果を出すことが前提で、かつ、会社が認めた場所や勤務時間内での就労となります)。テレワークの効果としては、雇用創出と労働力確保、オフィスコストの削減、優秀な社員の確保、ワーク・ライフ・バランスの実現、生産性の向上、環境負荷の軽減、事業継続性の確保(BCP)などが挙げられます。

表1 テレワークの効果

表1 テレワークの効果

出典)一般社団法人日本テレワーク協会

テレワークの種類としては、就労形態別では、企業等に雇用されている「雇用型テレワーク」と、個人事業主のような形態の「自営型テレワーク」に分類されます。また、就業場所による分類では、自宅で仕事を行う「在宅勤務」、出張時の移動中などに公共交通機関内やカフェ等で仕事を行う「モバイル勤務(モバイルワーク)」、共同のワークスペースなどを利用して仕事を行う「サテライトオフィス勤務」の3つの形態があります。

図1 テレワークの種類と特徴

図1 テレワークの種類と特徴

出典)一般社団法人日本テレワーク協会

運輸業におけるテレワーク導入の課題

総務省によると、テレワーク導入企業の割合は13.8%(2017年、以下同じ)ですが、業種別でみると、運輸業は7.6%と最も低くなっています。建設業は12.1%、製造業は13.0%です。どちらも全体の平均よりはちょっとだけ下ですが、運輸業よりだいぶ上です。

図2 産業別テレワーク導入状況の推移

図2 産業別テレワーク導入状況の推移

出典)総務省「平成29年度通信利用動向調査」より作成

職種別にみると、物流の現場職が含まれる輸送・機械運転従事者は7.6%、運搬・清掃・包装等従事者は4.5%と低くなっていますが、管理職、営業、研究職が約30%と高い数値を示しています。

図3 業種別・職種別雇用型テレワーカーの割合

図3 業種別・職種別雇用型テレワーカーの割合

出典)国土交通省「平成29年度テレワーク人口実態調査-調査結果の概要-」より作成

運輸業においてテレワークが十分普及していない理由は、やはり現場での業務があることでしょう。物流はモノを保管したり、梱包や検品などの流通加工を行ったり、トラック・船舶・航空機などの輸送機器に積み込んで運んだり・・・と実際にモノを動かしたりモノに関わる仕事です。そのため、港湾などでの荷役業務、倉庫での保管業務、トラックなどでの配送業務など、実際にモノがある場所での作業も多くあり、自宅やカフェなどでのテレワークは想像しにくいかもしれません。

しかし建設業や製造業も同じように「現場での業務」がある産業です。ビルの建設はカフェではできませんよね?ではなぜ運輸業はこれらの業種と比べても普及率が低いのでしょうか?

運輸業におけるテレワーク推進の考え方

筆者の大胆な推論を申し上げると「現場はテレワークできない」という固定観念に縛られ、そこで思考停止に陥り、その後検討もしていないのです。当たり前ですが、運輸業は現場だけで成り立っている訳ではなく、営業・事務・総務・経理・法務・研究などの色んな職種の皆様で活動しています。職種別で見た通り、管理職、営業、研究職など、パソコンがあれば場所を問わず事務所での作業と同じように仕事ができる職種は既に高い数値を示しており、全社画一に導入するのではなく、できるところからやるというのもテレワークをいち早く推進するにあたり有効でしょう。恐らく運輸業と建設業・製造業の差は、現場以外の職種への対応だと思われます。

テレワークを導入している製造業のなかには、テレワーク制度の対象を事務・管理職や営業職などの間接部門に限定しているところもあります。また、制度上は間接部門だけでなく現業部門も対象としながら、実際の運用は部門責任者に一任するなど、組織単位での適用としている企業もあり、現業部門については、各社のテレワーク推進の目的や方針により柔軟に対応しています。

現場に近い職種ほど事務職のように一日単位でのテレワークの実施は難しくなりますが、一律に「現業部門ではテレワークはできない」と決めつけるのではなく、精算処理などの事務処理や書類の作成など、一日単位でなくでも数時間単位で自宅やサテライトオフィス(営業所など)でテレワークを行うことも考えられます。

繰り返しになりますが、全社での一斉導入が難しい場合は、間接部門のみ、または、育児介護中など必要性の高い社員を第一段階の対象とするなど、小さなトライアルから始めることも一案です。トライアルを積み重ねるなかで制度を見直し、改善を重ね、徐々に実施範囲(対象者、対象業務、実施頻度)を広げていくのです。

企業によるテレワークを含む「働きやすさ」への取り組みは求職者の最大の関心事の一つとなっています。他業界が積極的に働きやすさを追求するなかで、人手確保や従業員のワーク・ライフ・バランス改善のため、物流に関わる企業も遅れを取ることなく、ワークスタイルの変革に向けた努力が求められるでしょう。

ブロックチェーン技術の物流分野での活用状況

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