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【人員配置】物流量に合わせた上手な人員配置の5つのステップ


人員配置を上手くやりくりすることは、人手不足の面、収益の面から必要です。しかし、上手くやりくりできていないところが多くあり、その要因として、物量が読めず、人時を予測しづらいといった計画上の要因と人手の調整方法が個々のエリアでバラバラでその方法も属人的といった実運用上の要因があります。そのため、計画から実運用を対象とした体系的な人員配置が必要です。

人員配置の理論は、①作業の標準化、②力量管理、③物量予測、④人員配置、⑤調整といったフローに従って実施していくものです。そして、KPIを計測して、確認していくことでより運用を改善することができるようになります。

人員配置の収益へのインパクトは大きく、この取り組みを重点的に行っていくことは、収益向上に繋がり、さらには残業が減り、労働環境が改善されます。ただし、その基盤として業務の標準化や生産性計測といった地道な改善が必要となります。

1.物流を取り巻く環境と人員配置

倉庫で人手を確保してやりくりすることは、収益に直結するもので、単純に上手くいくものではなく、日々悩まれている方が多いと思います。しかし、有効求人倍率が上昇し、人が集まりにくくなり、さらに労働者人口が減少傾向にある今日、人員配置を効率的にすることは急務の課題となっています。近隣の倉庫間での人手の取り合い、スーパーやショッピングモールとの取り合いがあり、また、立地や交通手段によって、なかなか人が集まらないという状況があります。

労働政策研究・研修機構では、今後人手不足が深刻かつ慢性的となると予想しており、人材不足による職場環境悪化によってさらに人手不足になっていくということが予想されています。そのため、人手不足に対応できる職場環境が求められ、その一つとして、人員配置を適正に運用していくことが必要となってきています。

一方、人員配置の経営への影響はとても大きなものです。例えば、100人の倉庫で1日8時間働くとして何らかの方法で人時を1%削減する場合の影響は、1日800人時、時給1000円で1日あたり80万円かかることになるのですが、それが1%減とすると1月で24万円、1年で288万円のコスト減となり、1%減少だけでこの影響ですので人員配置のやりくりは非常にインパクトが大きいものです。

このように人手不足の面、企業の収益へのインパクトの面の両面から人員配置を適正にすることは重要です。それでは、これまで何が問題で人員配置が上手くいっていなかったのでしょうか。

2.人員配置に関する問題点

人員配置に関する問題点を整理すると、大きくは計画と実運用の2つに分かれ、計画は生産性、物量、人の手配、実運用は、実際の運用の調整での情報共有や調整方法といった項目に分かれます。

まず、計画の生産性では、そもそも作業者の生産性が分からないことやばらつくことがあり、投入人員が読めない、終了時刻が読めないということがあります。そして、物量の予測があたらないということがあります。また、人の手配では、なかなか人手が集まらない、物量が変動しすぎて、集めにくいといったことがあります。

実運用では、人員配置の状況が、ホワイトボードなどで見える化されていない、フロアが異なると、情報共有するような場やコミュニケーションすることが無く、調整しづらいということがあります。その調整方法も属人的に行われているところもあります。

このように計画の面では、生産性や物量の予測精度が低く、人手を確保できないということが問題となり、実運用の面では、調整が属人的かつ経験によるものでばらつき、調整方法が安定せずに情報共有、調整が不十分になってしまうことが問題となります。つまり計画の予測力向上と調整力の向上が課題となります。

このような課題に対して予測力や調整力を含めた体系的な人員配置が解決策になると考えています。まず体系的な人員配置の説明に入る前にそもそも人員配置の理論はどのようなものになっているのでしょうか。

3.人員配置の理論

人員配置の理論で最も有名な理論で、レイバースケジューリングという理論があります。これは、スーパーマーケットを対象に発展してきた理論です。レイバースケジューリングを一言で言いますと、仕事量を正確に予測し、過不足なく人手を投入することです。結果として期待するサービスレベルを実現する。出荷時刻を守る、品質を維持する、自分たちの収益確保を実現するという結果を目指すことです。これがレイバースケジューリングの趣旨です。

そして、レイバースケジューリングは簡単に言うと3つになります。①正確に物量から仕事量を予測する。②その仕事量から生産性により人手を手配し、確保する。③生産性を使って人を配置して、実運用では人の過不足が出たら上手くやりくりする。かなり単純に簡単に言うとこういう理論になってしまうのですが、実際にこれを運用していくには、どうしたら良いのでしょうか。

先ほどのレイバースケジュールの理論をかみ砕いて、ブレークダウンしてみたものがこのフローです。
①作業の標準化
②力量管理
③物量予測
④人員配置
⑤調整

まずは安定した作業が必要であり、そのためには作業の標準化が必要です。そして、標準レベルの作業ができるようになり、それ以上できるようになる人もいるので、力量管理で各作業者がどの作業をどのくらいできるのか把握していきます。

次は、正確に物量を予測する。その物量と力量管理による生産性から、投入人員、人員配置を決める。必要人時と実際との過不足をチェックする。人の過不足を皆で共有して、人を融通していくということです。それでは、次にそれぞれについて見ていきます。

①作業の標準化

作業標準書はやるべきこと、注意事項、勘やコツを記入したものですが、自分のためのマニュアルではなく、作業者が分かりやすいということを念頭に写真を使いながら、文字を少なくして作っていくことがポイントになります。

中にはビデオを活用しているところもあり、そこでは、初心者の教育が大きく短縮されたといった声もあります。今はビデオや動画によるマニュアル作成ツールもあり、マニュアル的な標準書を作成する労力を上手く削減しながら、教育ツールを作ることができるようになっています。

②力量管理

力量管理は、スキルを人別にランク分けして管理するもので、研修中、ひとりで作業できる、教えることができる、の3つに区分して運用しているところもあります。暗黙知を形式知にして共有していくという意味、スキル上達のモチベーション向上にも繋がっていくという面で重要になってきています。

しかし、スキルを把握すること自体が、労力がかかるものであり、ハンディを使って計測した個人生産性を目安とする、テストやアンケートを使って把握するなど、計測方法を簡単化する必要があります。

③物量予測

物量はなかなか予測することは難しいところで、どうやったら良いか分からないということがあると思いますが、物量とその考えられる要因をデータ化しておくことで、簡単にエクセルの統計ツールを使えば予測ができます。また、今はビジネスインテリジェンス(BI)といったソフトが販売されており、自動で予測できるものもあります。

そのようなツールを活用して、何が要因か追加修正をステップバイステップでしていけば、予測精度は向上します。曜日、月初、月末といった要因を使って、物量予測式を数式で示されていると誰でも予測でき、かつ何が原因で予測が外れたのか明確になり、精度を高めていくことができます。ただし、荷主から予測物量をもらっている場合で、予測の必要が無い場合があります。

しかし、その場合でも予測と実績で誤差がどれくらいあるのかチェックして、誤差の要因がイベントなのかどうか確認していき、要因を明らかにして荷主と調整していくことで、精度を向上していくことができます。

④人員配置

次に人員配置ですが、予測物量から基準生産性を用いて人員数を出していくと当然ですが、適正値になります。この基準生産性ですが、日々の作業が変動していく倉庫では直近の生産性を使うと精度が高くなります。

進め方は前日までに予測物量と基準生産性をもとに割り出した人員数を手配し、そして当日は確定物量から必要人時を算出して、当日の予定人時との誤差を把握して人の配置を調整する。これを都度物量が更新されたタイミングで必要人時を出して、今の人員配置と比較して調整する。このような方法で人員配置を適正化します。ただし、実運用では人の過不足が大きく生じることがありますので、応援できる人を事前に確保する必要があります。

⑤調整

適正な人員配置案を算出した後は、人手を上手くやりくりするステップとなります。人手を上手くやりくりする方法は、実際には各現場で様々だと思います。一番導入しやすいものは、現場間のミーティングを3時間ごとに区切って開いて、進捗をお互いに確認し、人を融通し合うやり方です。スキルの高い人の融通や、そもそも作業待ち状態の人を融通し合うことで、物量の変動に柔軟に対応できているセンターもあります。

難しいものとしては(システム導入が必要という意味で)、各現場の必要人時と実績人時、予定人時をリアルタイムに算出して、各現場のディスプレイで共有してかつコントロールルームから各現場へ人員のやりくりを指示して調整していくというやり方があります。

4.人員配置のポイント

ここまで計画と実運用の面から適正な人員配置をどのようにしていくのか述べてきましたが、最後に実施するにあたってのポイントを以下に述べます。
<重要ポイント>
●計画
①物量の予測精度を上げる
②基準生産性により人員配置を見積る
③多能工化と応援確保
④スポット作業者ができる作業をつくる

●実運用
①人員配置のコミュニケーションの場をつくる
②KPI管理による改善

まずはそもそも予測物量が合っていないと、人員に過不足が生じて、生産性がぶれるということがありますので、物量の予測精度を上げる。そして、基準生産性により人員数をきっちり出していく。ただし、正確に物量を予測し、生産性から人員数を算出した場合、ぎりぎりの人員になり、必要人時との実績のズレが生じますので、それに対応できるように、多能工化を進める、応援者を確保しておくことが必要になってきます。

イレギュラー的な要素としてまた、波動が大きいモノを扱っている場合には、作業者数の変動が大きくなってきます。そのためスポットの作業者ができる工程をあらかじめ切り出せるようにしておくことも対策として有効です。物量が増えた場合、初心者用工程を切り出して、その工程をスポット作業者に任せれば、物量に対応できるようになります。

実運用では過不足を現場間で共有して人員配置していくためにもコミュニケーションの場を整える。過不足の際には現場間でコミュニケーションをしてやりくりすることがポイントです。

また、この仕組みをさらに上手く回していくために、倉庫全体のKPIの目標を立てて、生産性の変動がどうなっているのか確認し、また、生産性が低いところは、KPIを階層的に分解すると何が原因となっているのか確認していくことが有効です。KPIを設定することでPDCAサイクルで人員配置を改善していくことができるようになります。

このようなポイントに留意して体系的な人員配置を徹底して運用していくことで、終了時間が安定し、職場環境が改善されます。そして、人員配置が改善されれば当然収益が向上することが見込まれます。

ただし、このような取り組みは作業標準書をつくる、多能工化を進めて記録する、作業時間を計測して生産性を算出するといったことがベースとなり、地道に改善していくことが必要です。地道な改善に根気よく取り組んでいくことは、大きな成果を得られるだけでなく、作業や人員配置の見える化が進み、今後の自動化技術導入の環境を整えていくことに繋がりますので、是非日頃の業務に参考にしていただき、まずは現業が楽になることを目標に取り組んでいただければと思います。

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