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【倉庫改善】倉庫の動線を把握する3つの手法

倉庫の動線を把握する3つの手法

IoT時代における倉庫の動線を把握するには、UWB、PDR、BLEの3つの手法が有力です。その中でも、Bluetoothを使ったビーコン(BLE)は、低コストかつ簡易に使える最も有力な手法といえます。これらの手法について解説します。

倉庫の動線を把握したい・・・

お客様との会話の中で、「倉庫の動線を把握したい」というお話を受けることがあります。倉庫の動線に多くの無駄があると思われるが、それがどのようなケースで生じているのか分からないという内容です。そもそも現在の動線がどのようになっているのかを把握することすら把握できずに始めから諦めているようです。

これまでは、倉庫内の動線を把握しようと思うと、交通量調査のように通路が交差するポイントでどこからどこへ移動したかを記録したり、ビデオを片手に追跡したり、多大な人的労力が生じていました。「その調査や検討の労力に見合うだけの効果が創出できるのか?」といった疑念を払拭できずに、多くのケースで先延ばしになっていました。

近年では、IoTの目覚ましい進展により、位置情報や動線を安価かつ手軽に把握できるようになりつつあります。今後、有望と思われる倉庫の動線を把握するための3つの手法をご紹介します。

UWB(Ultra Wide Band、超広帯域無線通信)を使った手法

30~50mの間隔でUWBの固定機を上部に設置することで、2点測位の技術から±30cmの誤差で位置情報を取得できるというものです。(±30cmは正直スゴイです!)作業者が小型のUWBタグを身に着けることで、動線や位置情報を取得することができます。位置情報の取得精度が高いため、重量ラックくらいであれば自動でロケーション管理を行うこともできるかもしれません。設置や携帯は、図表1のようなイメージです。

一方、UWBの固定機を30~50mの間隔で設置する必要があるため、大規模な倉庫ではコスト高となることが容易に想像できます。株式会社シーイーシーのホームページで紹介されている事例では、40m×40mのエリアで作業員10名のとき500万円とのことで、少々、いや、かなり高額であることが分かります。この価格は物流業にとっては厳しいです。今後の低価格化に期待したいところです。

図表1:情報通信研究機構におけるUWB実証実験

図表1:情報通信研究機構におけるUWB実証実験
出典)https://www.nict.go.jp/press/2014/05/26-1.html

PDR (Pedestrian Dead Reckoning、自立航法)を使った手法

PDRは、加速度、磁気、ジャイロなどのセンサーを使い、自分の移動方向と移動量を推定する手法です。これらのセンサーは、スマートフォンにも搭載されており、計測を開始する位置情報が分かれば、各センサーから取得される値からの計算のみで開始場所からの相対的な位置情報が推計できる仕組みです。

外部の環境に依存しない(アンテナや他のセンサーが不要である)ため、コストも安価となります。しかしながら、この方法は計算のみで位置情報を推計していることから、少しの誤差が徐々に積み重なり、結果として全く異なる場所と誤認識してしまうことも珍しくありません。

スイカ割りを思い出して下さい。目隠しをして、頭ではスイカの位置を気にしながらも、少し回転するだけでどこがスイカか分からなくなってしまいます。スイカ割りの場合は、周りの仲間が「もっと前、少し右」といった具合にガイドしてくれます。これと同じように、現在は他の手法と組み合わせて使う方が主流のようです。

例えば、倉庫の通路内の動きはPDRで推計していますが、倉庫のコーナーにビーコンを置いておくことで、その電波をキャッチする度に「ここがコーナーだぞ!」と位置情報の正誤を補正してあげるような使い方です。PDRの場合、アルゴリズムにディープラーニングを組み込むことで、補正が必要となる毎に賢いアルゴリズムに成長させることも可能ではないかと思われます。

BLE (Bluetooth Low Energy)を使った手法

BLEは、低消費電力でBluetoothの信号を定期的に発信するいわゆるビーコンの一種です。このBLE(以下、ビーコンといいます)という用語も最近は頻繁に見かけるようになり、ビーコンというとほとんどがBLEを意味するようになっています。これまで、当社でもいろいろ検討を行ってきましたが、ビーコンは位置情報を取得するには最もコスパが高い手法だと思います。

ビーコン利用の主戦場は今のところプロモーションです。例えば、店の販促用クーポンの配信(店の前のビーコン信号をキャッチすると割引クーポンを配信)を行う、展示されている商品の前でビーコン信号をキャッチすると詳細説明がスマホに表示される、といった使い方が増えています。

倉庫内の利用では、ビーコンを10m~20mの間隔で設置することで、1点の一番強い電波のビーコンの信号からスタッフ別に作業エリアを特定することも可能です。3点のビーコンの電波強度を使えば、高い精度で位置情報を推計することもできます。

ただし、倉庫はそう単純ではありません。倉庫内の環境によってはビーコンの電波強度が大きく変化してしまいます。これがビーコンの欠点です。例えば、スチール系の荷物や倉庫内のラックなどの金属による電波の遮蔽や反射、飲料のような水ものによる電波の減衰によって、単純な電波強度からは正確な位置情報を推計することが困難となります。このように電波強度の数値のブレが大きいために、狭い通路幅の動線の取得は苦手としていました。

そのため、指向性のある(一定方向にしか電波が飛ばない)ビーコンを使いつつ、事前にきちんと位置情報が取得できるかを、キャリブレーション(現場での調整)する必要があり、これを行うとあっという間にうん百万円という価格帯になってしまいます。

ビーコンのみの計測では高い精度の動線取得には限界があります。これは各社も認識しているはずです。先ほどのPDRを補完的に使うことも実際に行われています。また、倉庫内のレイアウト図で補正することも有効です。倉庫内のレイアウト図に作業スタッフが移動する動線(通路)をあらかじめ定義しておくことで、3点のビーコンによる位置情報から高い精度で通路の場所を特定することが可能です。ビーコンは、安価かつ手軽に行えることから最も将来性を感じる手法です。

まとめ

倉庫内の動線取得の手法として、近年、脚光を浴びている3つの手法を紹介しましたが、コストと手軽さを考えるとやはりビーコン(BLE)が最有力と感じます。一桁の営業利益率が一般的な物流業においては、現状把握を行うために数百万円といった多額の予算を確保することはできません。その意味では、「安価かつ手軽」は重要なキーワードです。

動線の結果として、スパゲッティ図などが提示されますが、正直なところ、善し悪しの判断や改善施策の立案までたどり着くのは難しいようです。取得した情報を数値化・指標化(例えば、1アイテムピックあたりの移動距離、1分あたりの移動距離、非移動時間の比率・・・・etc)して、初めて善し悪しの判断ができます。

複数の拠点やスタッフを比較することも有効です。場あたり的ではなく、継続的かつ網羅的に検証するには、指標に基づいた活動が不可避です。このようなPDCAサイクルの推進は改善の基本ではありますが、まだまだ物流現場で出来ていないのが実態です。これから到来するIoT時代では、取得できる指標や情報が格段に増加します。IoT時代を生き抜くためには、もはや指標を使った分析や取り組みはやってあたり前といえそうです。

IoTツールろじたんを導入したのはどんな物流企業か?

この記事の著者

◆出身地:神奈川県茅ケ崎市◆血液型:B型
◆趣味:サッカー観戦、マラソン(いやジョギング)、プログラミング
1996年明治大学理工学部機械工学科卒業
【得意分野】・物流ネットワーク再構築・RFP策定支援・情報システム開発&導入支援

先日、会社から永年勤続者として表彰してもらいました。もう10年も勤めていることを改めて実感しています。頂戴した旅行券を使い4日間ほど北陸を旅してきました。出発直前に衝動買いした360度カメラが面白い!撮影した絶景写真を後からクルクル回したり、スマホと専用ゴーグルを使えば、その場の雰囲気も再現できます。中でも、石川県の千里浜なぎさドライブウェイは世界で3カ所しかない車で走ることができる砂浜です。最高に気持ちが良いので、石川県へ旅行の際には是非お立ち寄りを!

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