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農業改革で物流業界に影響はあるの?② ~コメ政策の変化と物流~

【Logistics Report】農業改革で物流業界に影響はあるの? 連載②/連載②

前号に引続き農業改革が物流に与える影響について書かせて頂きます。
今号のトピックは「新規需要米」です。

図 1:お米の生産量と需要量推移
出所:農林水産省「食料・農業・農村白書」
(平成19年度)より日通総研作成

まず、我が国のお米の需給について見てみましょう。図 1のグラフをご覧になると判る通り、需要量は漸減しており、それに寄り添うような形で供給量も漸減しています。
ところどころかなり激しく供給量が変動しているのは、農業が自然相手で豊作凶作の波があるためですが、お米の需要量にほぼ同期して供給量も漸減しているのは、行政が様々な抑制策を講じているためです。
直近では2013年12月に政府が発表した「農林水産業・地域の活力創造プラン(通称:4つの改革)」でその内容が明らかにされています(図 2参照)。

1.農地中間管理機構(農地集積バンク)の設立
・地域内の分散した耕作放棄地等について、農地中間管理機構が借受
・必要に応じ基盤整備等を行った上で、担い手に農地を貸付
2.経営所得安定対策の見直し
・諸外国と生産条件格差のある作物生産者に対する直接支払交付金(ゲタ)
・価格下落等による農業経営影響緩和の為のセーフティネット的直接交付金(ナラシ)
・米直接支払交付金は2014年産から7,500円/10aに減額し、2018年廃止
・米価変動補填交付金は廃止し、ナラシに一本化
3.水田フル活用と米政策の見直し
・水田で主食用米以外の作物を生産する農業者への直接支払交付金(最大10.5万円/10a)
・上記他、二毛作、耕畜連携、産地交付金等の交付金も有
・これまで行政が示していた生産数量目標の提示を2018年より廃止
4.日本型直接支払制度の創設
・農業が担う地域保全、水利保全の取り組みに対して交付金を支給

図 2:農林水産業・地域の活力創造プラン(通称:4つの改革)概要
出所:農林水産省「新たな農業・農村政策が始まります!!」
(平成25年12月)より日通総研作成

「4つの改革」では、主食用米以外の用途である「新規需要米」の生産を奨励するために、転作を動機付ける交付金を定めています。その中で特に注目を集めているのが家畜の餌となる「飼料用米」です。需要者が出した2015年産の年間需要量見通しでは合計約105万トンとなっています。これは昨年のおよそ6倍という急激な伸びですが、実態はどうなのでしょうか。

農水省の2015年5月15日時点の発表では、生産量の予測は35万トンに留まっており、需要者側の見通しまでには至っていません。これは飼料用米が抱える様々な課題に起因しており、生産者側から多く聞かれるのは「保管場所の確保」や「流通経費低減」に関する声です。
保管場所の確保に関して農水省の公表資料では「主食用米の減少で空いた既存施設の有効活用等を進めていくことが重要であり、これらの取組を支援するために必要な予算を確保」とあり、保管場所確保のために新たに営業倉庫を賃借するなどの動きは、少なくとも今年度は殆どないと推測されます。
また、流通経費低減に関しては、「飼料用米の販売価格は主食用米よりも相当低い水準にあるが、輸送経費が販売代金を上回る実態にはない。」と記載があるのみで、現時点では生産者と需要者の自助努力で流通経費を低減していく必要があります。
農協系統では、全農が生産者から直接買取り、保管・配送を行うスキームを確立することが公表されております。それ以外の需要者への輸送については、上記の通り飼料用米と主食用米の価格差から、低価格での輸送料金の提示が必要となるでしょう。
飼料用米の近年の価格水準は30,000円/トンです。帰り荷、積み合わせ等の工夫で生産者も需要者も収益を確保できる輸送料金の提示ができれば、物流事業者にとっては新たな商機になるのではないかと思います。

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この記事の著者

◆出身地:静岡県富士市 ◆血液型:B型 ◆趣味:日本酒・昭和歌謡・落語・読書
2005年 早稲田大学 商学部 卒業
【得意分野】 ・物流戦略策定 ・業務標準化支援 ・物流事情調査

子供ができ家が手狭になったこともあり、茨城県の龍ヶ崎市に庭付き一戸建ての居を構えました。構えた、と申しましても賃貸住宅ですが。以前借りていた都内の賃貸アパートと同等のお家賃で部屋数が倍増しました。ちなみに通勤時間も倍増です。私の部屋には図面上では「書斎」と名付けられたクローゼットまがいまで付いております。持てあましています。今はただ、段ボールの中に詰め込まれた書籍たちを眺めながら、いつかはオシャレな本棚と書斎セットのようなやつを買って、あんなレイアウトやこんなレイアウトにしてやる、と妄想を膨らませております。
こんなわけで家の中の整理整頓もままならない男ですが、当社入社以前に物流会社と専門商社の物流部門を経験しておりますので、荷主、物流事業者両者の視点を踏まえたお手伝いができるかと存じます。どうぞお気軽にご相談ください。

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