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新興国におけるトラック運行管理支援システムの役割と課題

【News Pickup】新興国におけるトラック運行管理支援システムの役割と課題

日本と新興国、運行管理支援システムに求められる機能の違いとは?

異文化と接することは大変面白いもので、時にスリリングでもあります。ミャンマーの貨物駅では、一抱え以上もある岩石がサンダル履き・素手の人々によって積み降ろされ、ベトナムの市街地では、一家5人が仲良く跨るスクーターの横を建材が満載された大八車(スクーターが牽引!)がすれ違います。
法律も道徳観も異なるため、物流現場においても、日本では考えられなかったような問題に直面している方は多いでしょう。たとえ表面的には同じような事象であっても、原因や理由は違うということが多々あります。今回はそのような文化の異なる新興国での、運行管理支援システム事情について解説いたします。

日本では、「速度・時間・距離」を記録し、分かりやすい形で管理者やドライバーへ提示する「デジタル式運行記録計」、通称「デジタコ」や、車両に大きな衝撃が加わった時刻、位置、前方映像、加速度、ウィンカー操作、ブレーキ操作等を記録する「ドライブレコーダー」、通称「ドラレコ」が広く普及しています。これらの機器は、導入目的によっては、「環境対策機器」「エコドライブマネジメントシステム(EMS)」等と呼ばれることもありますが、今回は便宜的に「運行管理支援システム」と総称します。
現在、このような運行管理支援システムは、法律で定められた情報を管理する目的や事故防止目的だけにとどまらず、トラックの効率的な運用(燃費効率・稼働率)、ドライバーの労務管理徹底(点呼・休憩時間)や輸送品質向上(振動・衝撃・温湿度)を主な目的として導入されています(図参照)。
さらに、情報通信技術の発展に伴って、事務所との通信機能、GPS を利用した動態管理機能やドライバーの体調管理機能等をも併せ持つ多機能なシステムへと成長しつつあります。

図:EMS 機器(運行管理支援システム)の活用状況
出所:全日本トラック協会「環境対策機器等の導入
効果に関する調査結果」(平成 25 年 3 月)

一方で、ASEAN 諸国や BRICsに代表される新興国においてはどうでしょうか。きっとメーター類も故障しているようなひどいトラックばかりで、日本のようなシステムはまだまだ導入されていないだろう、と想像される方もいらっしゃることと思います。
それも一部では間違ってはいませんが、必ずしもそんなトラック会社ばかりではありません。中には、エアサスを標準装備したトラックを多数揃え、リアルタイムな動態管理システムも既に導入している会社さえあります。
では、こういった会社はなぜ決して安くはないコストを支払い、先進的なシステムを導入しているのでしょうか?

もちろん、日本と同様に業務の効率化も目的の一つです。しかし、実はそれ以上に切実な理由があります。新興国では、ドライバーのモラルが日本とは大きく異なり、会社のトラックを堂々と自宅へ持ち帰り私用で運転したり、必要以上に長い休憩をとったりするドライバーがいるばかりか、商品や燃料を抜き取って売り払ってしまうようなケースが後を絶ちません。また、トラックごとハイジャックされたり、強盗に遭ったりすることもあります。
その他にも、他国との密輸に利用されたことが発覚して検挙されたり、危険な運転によって事故を引き起こしたりするケースもあります。そのため、トラック会社は、高価なシステムであってもそのコストを支払い、トラックとそのドライバーがいつどこで何をしているのか、正確に把握しようと努めているわけで、自ずとトラック運行管理システムに要求される機能も細部で微妙に異なってきます。
例えば、陸路での越境物流に供するトラックには、位置情報や走行記録等のデータを自国外でも送受信するための通信手段を予め用意しておかなければならず、SIM カードが複数必要になります。また、2~3 人のドライバーで交代しながら何日も運行するようなケースでは、いつ、どのドライバーが運転しているのかを判別・管理する機能を強化するとともに、記録可能なデータ容量を必要十分に確保しておかなければなりません。

写真:トラックに設置されたデジタコ(ベトナム)

このように、日本の企業が海外へとサービスを拡大し、新たな顧客を獲得しようとする時、日本のトラック運行管理支援システムはそのままでは充分に機能しないことがあります。異なる国ごとの文化と慣習を把握した上で、より有効に働くシステムへと調整するノウハウが必要となるのです。

【これからの運行管理支援システムに求められる拡張機能】
① 遠隔地での点呼、アルコールチェックの実効性向上のための機能
② 健康診断や適性診断データの一元管理
・フォローアップ
③ 健康・体調管理/増進取組みの支援機能
④ 各種センサーや ASV との連携による、急な疾患や居眠りの検知と自動ブレーキ、自動通報等の連動
⑤ 運転時間など法令順守状況のチェック
・注意喚起機能、GPS・地図情報照合による速度超過の防止
⑥ ビックデータを活用した更なる安全対策
・将来制度検討

出所:国土交通省「次世代運行管理・支援システムについての検討会」資料より著者抜粋

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