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TPP発効による関税撤廃が物流に与える影響は?

【News Pickup】TPP発効による関税撤廃が物流に与える影響は?

4回シリーズで解説する TPPで日本は、物流は、どう変わる!?③

本年2月4日に参加12カ国により署名されたTPPは、発効を目指して議会承認等各国の国内手続きに入ります。
今回は、TPPが発効した暁に、各国の輸出入貨物の流れはどのような影響を受けるのか、国際間物流はどのように変化するのかという点について解説します。

表1:TPP参加12ヵ国のFTA/EPA締結状況
出所:JICA「世界と日本のFTA一覧」(2015年11月時点)をもとに作成

まずは、表1をご覧下さい。この表は、TPP参加12カ国中、TPPに先んじてどこの国同士でFTAまたはEPAを締結しているかを示しています。
「★」が締結しているペア、「☆」が締結に向けて交渉を始めているペア(現時点では日本カナダ間のみ)、「TPP」がFTA、EPAいずれも締結していないペアです。ご覧の通り、半分以上のペアが既にFTAあるいはEPA締結済みです。
品目ごとに見てみなければ詳細の断言はできませんが、TPPが発効したとしても、基本的にこれらの二国間の物流にそれほど大きな影響が発生するとは考えにくく、影響を受けると予想されるのは、やはり何の協定も締結していない国々の間の物流です。特に影響が大きいと予想されるのが、日米間とASEAN各国/NAFTA間の物流でしょう。

日本でTPPが議論される際、常に話題の中心は、「海外の安価な農林水産物が流入することで、日本の農林水産業が被るであろう打撃について」になりますが、本当にそうなのでしょうか?

表 2:各国輸入関税の即時撤廃率と最終撤廃率
出所:内閣官房TPP政府対策本部「TPPにおける関税交渉の結果」をもとに作成

次に、表2をご覧下さい。この表は、各国輸入関税の即時撤廃率と最終撤廃率を、農林水産物と工業製品それぞれに分けて示しています。即時撤廃率とは、TPP発効と同時に輸入関税が0になる品目の割合です。それに対して、最終撤廃率とは、発効10数年後に輸入関税が0になる品目も含め、TPPが関税撤廃の目標とする全ての品目の割合です。

ご覧の通り、農林水産物の関税の即時撤廃率は概して低く、主たる輸入国となると予想される日米の即時撤廃率は、いずれも50%台と非常に低いレベルになっています。つまり、農林水産物の輸入関税撤廃による影響は短期間ではなく、中長期間をかけてゆっくりと出てくることが予想されます。それに対して、工業製品の関税の即時撤廃率は相対的に高く、これまた主たる輸入国になると思われる日米両国の即時撤廃率は、ともに90%を超える高いレベルになっています。つまり、工業製品の荷動きの変化の方が、農林水産物に比べて遙かに早いスピードで出てくる可能性があるということです。

TPP参加12カ国の中で、工業製品の輸出国として特に注目すべき国は、マレーシアとベトナムです。この2カ国にとって、米国を中心とするNAFTA3カ国とのFTA/EPA締結はTPPが初めてであり、近年二桁台の伸びが続くNAFTA向け輸出が、TPP発効によりさらに拡大する可能性があります。
両国には日本企業も多数進出しており、現地工場から米国への輸出、さらに近年米国の工場として成長著しいメキシコへの輸出の伸びが予想されます。

環太平洋物流においては、長らく中国発北米向け東航の流れが中心を担ってきましたが、TPPの発効は、この従来の太い流れに加えて、ASEAN発北米向けという、もう一つ新たなメインストリームが形成されるきっかけとなる可能性があります。

一方、日本はTPP参加国中9カ国とFTA/EPA締結済みで、カナダともTPPに先んじてEPA交渉を開始していますが、米国との間では、今回のTPPが初めてのFTA/EPAとなります。
現時点でも米国向けの輸出が多く、「分母」が大きいため、マレーシア発やベトナム発ほど高い伸びは期待できないかもしれませんが、ハイエンドの工業製品を主体として、米国向け輸出の一定の伸びが見込まれるのではないでしょうか。

この記事の著者

◆出身地:東京都中野区 ◆血液型:B型 ◆趣味:歌唱・楽器演奏・楽器蒐集・ポタリング・ウォーキング
1978 年 中央大学 法学部 政治学科 卒業
【得意分野】 複合輸送・ディストリビューションを中心とするグローバルロジスティクス

1983 年以来交互に日本とアメリカに住み、在米期間は通算で 17 年近くなりました。2008 年に帰国してからは、日通総合研究所で調査・研究・コンサルティング部門のマネジメントに従事しつつ、海外調査の時には日本と海外の輸送や物流の違いを見つけるように心がけています。とくに最近では、独自の発展を遂げてきた日本の輸送・物流のグローバル化の行く末に注目しています。日本では見られない輸送機器や荷役機器が動いているところを見ることと、各国各地の地元のローカルフードを食べることが何よりも楽しみです。

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