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トラック運転者を増やすために

【Logistics Report】トラック運転者を増やすために

昨今、トラック運転者不足を危惧する声が大きくなっています。昨年末、某研究所より、10~20年後に人工知能やロボット等で代替可能になる職業というものが公表されました(※1)。この中では、検討対象の601業種のうち、代替可能性の高い職業100業種が発表されていましたが、その中にトラック運転者は含まれていませんでした(※2)。この分析では「他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業」は人工知能やロボットに代替されにくいとされています。トラック運転者という職業は、そう簡単に人工知能やロボット等への代替が進まないようです。
こういった点からもトラック運転者不足は今後より一層深刻な課題となると言えるかもしれません。

トラック運転者はいわゆる3K職場と認識され、職業として選んでもらうことは難しい印象があります。一方で、物流は私たちの生活に欠くことができないものとなっています。
例えば、工場でテレビを作ろうとしても部品が届いていなければテレビは作れません。コンビニにお弁当を買いに行ってもお弁当が届かなければ、購入することもできません。会社帰りにスマートフォンで注文した化粧品が翌日手に入るのも円滑な物流のおかげです。我々の生活の多くが物流によって支えられており、トラック運転者が果たす役割は極めて大きいものとなっていますが、そのなり手は少ないようです。

昨年、トラック運転者不足はどのような社会要因の影響が大きいのか明らかにしようとする研究を試みました。公表されている統計資料から、トラック運転者数といくつかの社会指標について相関分析を行いました。社会指標には労働時間の長さや賃金の安さ、重労働の状況(重大事故の比率)、労働人口といった指標を用いました。当初、賃金の安さや重労働の状況といった要因が大きく影響をしているのではないかという仮説を立てていましたが、労働人口が圧倒的に大きな影響を与えているという結果になりました(グラフ1)。すなわち、労働人口が増えれば、トラック運転者になる人も増えるということです

グラフ1:トラック運転者への寄与度

この結果は至極当然ですが、労働人口が減少していく世の中としては問題です。しかし、実はこの分析には大きな仕掛けがあります。現在トラック運転者の98%は男性なので、分析では男性の労働人口を使用しました。しかし、今後女性を労働者として取り込むことができれば、労働人口を約2倍に増やすことが可能であり、トラック運転者不足を改善する方策としては極めて有効であることが定量的に示せたのではないかと考えます。
トラック運転者の労働環境は、女性を受け入れるためには十分とは言えず、すぐに女性運転者を増やすことは難しいかもしれません。しかし、バスや電車では女性運転者が多く見受けられ、これらの業界の取組を参考にしながら、女性運転者が増えるような環境を整えていくことが重要であることが改めて示せたのではないかと考えます。

グラフ2:就業者に占める女性の割合

※1株式会社野村総合研究所(2015年12月2日ニュースリリース)
※2ただし、宅配便配達員は代替可能性の高い100業種に含まれる。

この記事の著者

◆出身地:神奈川県横浜市 ◆血液型:AB型 ◆趣味:旅行・クラシック音楽・歴史探訪(寺社城人物巡り)
1996 年 東京商船大学大学院 流通情報工学専攻 修了
2009 年 東京海洋大学 博士(工学)号取得(海運ロジスティックス専攻)
【得意分野】 物流に関する都市計画(拠点立地・施設整備)・交通計画

6月に引越しをしました。幼少期から引越しが多く、前住居が今までで最も長く過ごした家でした。久しぶりの引越しは予想以上の物の量で、引越屋さんを困らせてしまったのではと思っています。同じ物流の世界でも、現場の力は偉大だと感じているところです。
大学入学から物流の世界に身を寄せ、はや 20 年に達してしまいました。当時と相変わらず物流効率化に励んでおりますが、研究者としては、20年前の問題がまだ改善されていないのではないかと反省しきりです。最近では、労働力確保が問題となっています。同じ物流効率化でも、コスト縮減から省力化へ効率化の観点が変わってきています。ただ、省力化の推進は雇用の確保と諸刃の剣ともなります。今後は、職場転換にも対応できる人材育成など、効率化と雇用の維持とのバランスがとれた政策の重要性が増してくるのではないでしょうか。私もまだまだ勉強中ですが、次世代の物流実現に向けて貢献できたらと考えております。

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