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ベンチャー企業から見えてくるこれからの SCM

【Logistics Report】ベンチャー企業から見えてくるこれからのSCM

機能や価格などで差別化が難しくなっているスマートフォン業界において、アムステルダム発のベンチャー企業 Fairphone 社は“サプライチェーンの透明性”を武器に戦おうとしています。

Fairphone 社は原材料調達・製造でフェアトレードを徹底し、環境汚染や児童労働がないことを消費者に強調しています。その公平性を伝えるために、なんとコスト構造やサプライヤ・製造工場といった情報をすべて公開しているのです。

例えば 2015 年販売の Fairphone 2 は、販売価格が 525 ユーロですが、製造コストはそのうち 340 ユーロ。さらに製造コストの内訳も開示されており、輸送費は 2.28 ユーロ、梱包費は 1.50 ユーロです。部品サプライヤ、組立工場などの情報にいたっては、地図上に可視化されており、Web 上で確認できます。このサプライチェーンマップを見てみると、タンタルなどの鉱物はコンゴから、電子部品は日本・アメリカ・ヨーロッパが中心で、例えばメカニカルスイッチはパナソニック、環境光センサーは村田製作所から調達しているようです。

こういった Fairphone 社の取り組みは CSR の観点だけでなく、企業経営においても大変興味深いものです。何層にも及ぶ複雑なサプライヤー間の関係、供給量、在庫量、輸送費などが地図上で可視化されることで、サプライチェーンのボトルネック把握や、輸配送網の最適化・効率化に役立てることができるでしょう。

Fairphone 社の「サプライチェーン透明性」に貢献している Sourcemap 社も、注目すべきベンチャー企業のひとつです。MIT Media Lab の研究プロジェクトからスピンアウトして始まった同社のアプリケーションは、単に地図上に SCM 情報を表示するだけに留まりません。企業の ERP(Enterprise Resource Planning)と API(Application Program Interface)を連携させ、リアルタイムで製造計画・在庫数・販売数をモニタリングすることを可能とし、さらに部品の供給遅延などのボトルネックに対してアラートを出すこともできます。

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図:サプライチェーンの可視化
出所:Sourcemap社HPより

 製造・在庫・販売といった機能面、拠点配置・配送経路などの物理面に分断されていた SCM・物流情報を統合することで、他にも新しいサービスが生み出されています。

最後に紹介するベンチャー企業は、Flexport 社というフレートフォワーディングサービスを提供する会社です。Flexport 社は利用する運送事業者・通関事業者の“すべて”をインデックス化しており、輸送経路・モード・事業者・税関・貨物の種類・料金など様々な条件で検索できる DWH(Data WareHouse)を構築しています。蓄積された情報は無料で提供されるダッシュボードからアクセスでき、様々な分析を行うことができます。このほぼ“完璧な”データベースとソフトウェア群は、輸送サービスとも強力に連携しており、リアルタイムの貨物追跡だけでなく、AI による需給予測機能、自動発注、最適輸送経路の学習などを実現しています。Flexport 社の貨物取扱実績(売上高)は年間 15 億ドルとまだ少ないですが、取り扱い貨物量の増加とデータの蓄積により AI の精度が向上してくると、他のフォワーダーでは太刀打ちできなくなるかもしれません。既存の大手物流事業者が抱えるレガシーシステム群は、データの統合が困難であり、Excel・E メール・Fax といった時間のかかるやりとりがなくなる気配はありません。一方、こうしたベンチャー企業は、機械学習・ブロックチェーン・ドローンといった先端技術を駆使して、物流のすべてを「自動化」しようとしています。変化が遅いと言われてきた物流業界ですが、ベンチャー企業の活動に目をやると、今一番の「破壊的創造」が起こっている業界なのではないかとつくづく感じます。

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