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中国が「国際道路運送条約(TIR条約)」に批准

【Global Report】中国が「国際道路運送条約(TIR条約)」に批准

今年7月26日、中国がTIR条約に批准しました。中国はTIR条約に加盟する70か国目の国となります。

TIR条約とは、道路走行車両による貨物の国際運送を容易にするため、経由地の税関における輸入・輸出税の納付、または税関検査の免除等を定めた条約です。通常、数か国を経由する国際輸送の場合、国境を越えるたびに関税の徴収や税関検査を行うため、仕向地までの輸送時間のロスが多く発生しますが、TIR条約への加盟により、例えば中国から、ロシア、中東、EUまで、1度の税関検査で横断することが可能になります。

中国の加盟は来年1月5日に正式に承認される予定です。TIR条約には、中国に隣接するモンゴルやロシア、ならびに中央アジアとヨーロッパ全域諸国がすでに加盟しています。国連委任の下、国際道路輸送連盟(IRU:International Road Transport Union)が、TIRシステムという情報システムで管理しており、各国の税関と情報を共有しています。同システムには加盟国の陸路運送会社が登録し、登録会社数は現在3万3829社となっています(2016年5月現在)。登録した運送会社の車両は、“TIR”と表示されたプレートを取り付けて走行しています。

TIRのプレートが付いたトラック

写真: TIRのプレートが付いたトラック
出所:UNECE

中国政府は、2014年に発表した新シルクロード「一帯一路」戦略を軸に、アジア新興国との経済協力を強化しています。「一帯一路」戦略は、①中国西部と中央アジア・欧州を結ぶ「シルクロード経済帯」(一帯)と、②中国沿岸部と東南アジア・インド・アラビア半島・アフリカ東を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(一路)の2つのルート・地域で、インフラ整備および経済・貿易関係を促進するというもので、中国を起点に巨大な経済圏の構築を狙っています。近年は中国と欧州を結ぶ貨物鉄道輸送網の拡大も目立ちます。

この中国のTIR加盟により、中国~欧州間を結ぶ船舶、航空、鉄道輸送に加え、トラック輸送の促進も期待されています。ただし、1度の税関検査で中国~欧州間の横断が可能になるものの、中国から欧州までの輸送距離は、トラック輸送にとっては果てしなく長く、現実的には厳しいのではないでしょうか。輸送時間も海上輸送よりは短くなると思われますが、長距離を運転するドライバーにかかる負担も大きいことから、輸送途中に継走も必要となり、想定より時間がかかるのではないかと思われます。また、船舶や鉄道のような大量輸送は、トラックには望めないでしょう。

この「一帯一路」の構想の中には経済回廊の構築も提唱されており、中国・パキスタン経済回廊、中国・モンゴル・ロシア経済回廊、中国・中央アジア・西アジア経済回廊等があげられます。今年の6月には、中国・モンゴル・ロシアの首脳会談で、3か国間における経済回廊構築に向けた行動計画案が署名されました。8月中旬には、中国の1月のTIR加盟承認に向け、中国、モンゴルとロシアの間で、経済回廊を想定したトラックの走行テストが行われています。テスト走行では、中国、モンゴルとロシアから各々3台のトレーラが中国・天津を出発し、7日間で約2,200kmを走行、最終目的地のロシアのウラン・ウデに到着しています。テストでは、インフラ等の走行環境、トラック・ドライバーの安全性、国境施設の通過が評価され、中国、モンゴル、ロシア間における輸送の連携強化を目的としています。

この中国のTIR条約の加盟は、中国~欧州間における陸路の関税輸送をカバーするだけではなく、他の輸送モードと組み合わせた複合一貫輸送を促進し、ユーラシア大陸における中国を起点とした巨大な物流網を展開しようとする、中国の政策の1ステップと想像されます。

TIR加盟国

図:TIR加盟国 出所:IRUホームページより

この記事の著者

◆出身地:千葉県館山市 ◆血液型:A 型 ◆趣味:旅行(たまに)・カメラ(少し)・麺巡り(結構)・ゴルフ(最近)
2005 年 東洋大学 大学院 工学研究科建築学専攻 卒業
【得意分野】 ・トラック輸送、鉄道輸送、緊急物資輸送、インターモーダル輸送に関する物流調査

近年弊社では、国際物流に関する調査案件が増え、今回、私も微力ながらメキシコ~アメリカの北米調査に参加しました。やはり海外へ行くと、日本とは異なる文化や慣習に多く気づかされ、大変刺激となります。学生時代は、日本と異なる世界を見たいと、一生懸命お金を貯めて、海外へ一人旅に出たものです。
今回のメキシコを中心とした北米調査でとても刺激的だったのは、道路では長大な 53ft のダブルストレーラーが多く走り、鉄道では 53ft コンテナが主流となっていたことを見たことでしょうか。メキシコもアメリカの影響を受けて変化しています。世界各国でもこのように輸送効率化を求め、今後ますます輸送単位は大型化していくのでしょうか。その時、日本はどのように対応していかなければならなくなるのでしょう?
実体験による驚きも加わり、今では世界の動向から目が離せません。今後も海外調査案件を通して、皆様に刺激となるお話しを提供できたら、と思っています。

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