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CESで見えた物流の未来展望①

【News Pickup】CESで見えた物流の未来展望①

コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)視察のため、年明け早々ラスベガスへ

「コンシューマー? ラスベガス?」年明け一発目の仕事で行く出張の稟議申請の際、「何でロジスティクスの研究機関がそんな所へ行くの?実は正月休みでギャンブルしに行きたいんじゃないの?」と嫌疑を掛けられた筆者です(苦笑…)。当たり前ですがちゃんとした理由があるんですよ!ちなみに筆者は今回のラスベガス滞在中、ギャンブルで1セントも使っておりません!(本当です。)

 

ラスベガス空港の様子

写真1:ラスベガス空港の様子 飛行機を降りたらスロットマシンがお出迎え

◆CESとは

年明け1月5日から8日までの4日間、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(以下「CES」)がアメリカのラスベガスで開催されました。CESは世界最大のコンシューマー向けエレクトロニクス関連商品・サービス・技術の見本市で、毎年この時期にラスベガスで開催、今回が50回目の記念大会でした。年々出展者や来場者が増加しており、今年(2017年)は出展者数3,800社、出展エリア約24万平方メートル、加えてスタートアップ企業600社以上を招待した特別エリアも設けられました。来場者数は17万5千人で、うち5万5千人は筆者を含む米国外からの参加者です。

「コンシューマー・エレクトロニクス」とはテレビ、冷蔵庫などのいわゆる「家電」のことを指します。50年前に開催された際には白物家電やテレビ、ラジオなどがメーンの商品だったのでしょう(現在も白物家電は出展されています)。しかし時代が進むにつれてCESは様々なモノを取り入れて発展するようになりました。1990年代にはパソコン(ハードウェア・ソフトウェアの両方)・携帯機器やそれらを使ったサービスなどが登場しました。2000年代にはインターネットを活用した機器・サービスがCESを席巻、マイクロソフトのビルゲイツが基調講演を行ったり、ソニーやパナソニックなどの日系電機メーカーも新商品の発表をしたりしていました。2010年代に入ると主役はスマートフォンになり、アップルのiPhone・iPad、グーグルのアンドロイド端末やアプリ・ウェブサービスなど、我々が最近でも使用しているグッズが出てきました。ショーの名前である「コンシューマー・エレクトロニクス」の範疇を超え、ビジネスの分野で使用されている商品・サービスも数多く登場しているのですが、CESというブランドが確立されてしまったため、名称の頭に今でも「コンシューマー」が残っているという訳です。

とは言ってもまだ“物流”とは関連が薄そうなCESですが、今回筆者が来た理由は何でしょう?

それは、第一に物流業界でも昨今注目されているAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の活用が一番進んでいるのがコンシューマー分野だからです。その活用手法が将来的に物流分野でも応用される可能性が非常に高いためです。第二に、ここ数年のCESの主役は自動車だからです。「最近のCESは家電ショーではなく自動車ショーのようだ」と言われるほど、自動車関連の出展が多くなっています。特に自動運転の分野では自動車メーカー、電機メーカー、半導体メーカー、通信機器メーカー、そしてIT・ソフトウェア企業が新しい情報を発信する場としてCESを活用しています。では、AI・IoTと自動運転の二つに分けて、実際に見てきたトレンドをご紹介いたします。(紙面の都合上、自動運転は次号「ろじたす」に掲載します。)

 

◆AIの利用も音声コントロールが主流に

 今回のCESの主役は誰かと問われると、迷わず「アマゾン」と答えます。アマゾンのAI「アマゾン・アレクサ(Amazon Alexa)」が、冷蔵庫やオーブンなどのキッチンまわりのものから自宅の空調・電気・水道・錠などをコントロール(「スマート・ホーム」と呼ばれる)し、さらには自家用車内のナビ・音楽・自動運転の指示コントロール(「コネクテッド・カー)と呼ばれる」)にまで使われていました。

LGのアレクサ対応冷蔵庫

写真2:LGのアレクサ対応冷蔵庫

ワールプール社のアレクサ対応キッチン器具

写真3:ワールプール社のアレクサ対応キッチン器具

LG冷蔵庫の例では、足りなくなったものについて、声で「アレクサ、卵10個と牛乳1本、それからコーラを1ダース買っておいて」と冷蔵庫に話しかけると、「分かりました」と返答し、アレクサがアマゾンに発注してくれます。数日後(場合によっては数時間後)に発注したものがアマゾンから家に届きます。もちろんこの“発注”行為は、PCのキーボードを叩いたり、スマートフォンをタップしたりすることでも可能ですが、声で話しかける方が圧倒的に簡単で速いです。カンファレンスでの討議やブースでの説明、それから筆者の個人的なアメリカの友人に聞いてみると、「スマホをポケットから出すのが面倒くさい。声ですぐ指示できるので本当に便利」という声が多数聞かれました。

筆者も以前アメリカに住んでいたことがあるので「アメリカ人ってこんなに面倒くさがりだったっけ?」と一瞬思いましたが、良い意味で非常に合理的ってことなんだな~と思い直した次第です。
スマート・ホームの使い方では、「電気を消して、部屋の温度を朝6時に20度にして、陽が落ちたら雨戸を閉めて、車のエンジンを出発10分前にかけておいて、気温30度を越えたらスプリンクラーをONにし庭に水を撒いて…」などなど、人間は一歩も動かずに行動を効率化することができます。しかもアレクサはAIですから、それらの指示(コマンド)を自律的に学習していきます。数回指示を繰り返せば「何時に何をしたい」「何が必要」ということをAIが予測し、人間に提案してくる、というようなこともできるようになります。

アマゾン・エコー・ドット

写真4:アマゾン・エコー・ドット

写真4は「アマゾン・エコー・ドット」という端末で、アメリカのアマゾンで既に販売されています(日本ではまだ未発売)。値段は約50ドル(5,000円)、大変人気の模様です。これはアレクサ接続専用の端末で、無線LAN(Wi-Fi)経由でインターネットに接続を行えば、LG冷蔵庫の例のようなことを、この端末でも行えるようになります。(LGの冷蔵庫や自動車にはこれが組み込まれていると考えていいでしょう。)

筆者も試しに使ってみました。物の発注や家のコントロールだけではなく、様々な質問にもすぐに答えてくれます。「500フィートは何メートル?、ドナルド・トランプって誰?、ラスベガスから東京まで距離はどれ位?、今日のシアトルの天気は?、今の時間どこが混んでいる?」など。PCやスマートフォンでは、グーグル検索で同じことができますが、声だと本当に楽です。音声認識技術の向上も凄いな~と感じました。しかし筆者の拙い英語が原因か、「言っていることが分かりません」と返答されることもしばしば(泣)。日本語版の登場が待たれます…。

◆物流への影響は

人間の行動を学習することにより、「物のニーズ・タイミング・量」や「どんなプロフィールの人が何を欲するのか」などを予測することができるようになると考えられています。そうなると、物流の最小化・最適化(必要なものを最小限、必要な時だけに動かす)が進むことは間違いなく、現在の物流体制は大きな変化を迫られる可能性があると思われます。
また音声による指示は、倉庫内での作業やトラック運転手への指示などにも適用できそうです。「本日入荷予定の荷物がまだ着いてないけど、今トラックはどこにいるの?その遅れを計算して、入荷の順番を再計算して」というと、「はい、再計算しました。Aドックは・・・・」などと、リアルタイムに修正対応してくれるようになるかもしれません。ピッキングにおいては既にボイスピッキングなどの技術が使われていますし、倉庫作業だけでなく付随する事務作業の効率化にも適用されてくると考えています。

(次回に続く)

世界のIoT化動向とロジスティクス

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