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物流を考慮した建築物の設計・運用が環境を変える

【News Pickup】物流を考慮した建築物の設計・運用が環境を変える

商業施設や大型オフィスビル、その周辺で起きている物流問題と解決策

国土交通省が今年3月末に「物流を考慮した建築物の設計・運用について」の手引きを策定・公表いたしました。背景には、これまで物流が考慮されないまま設計されていた建築物も多く、その弊害として、周辺環境への支障が見過ごせない問題となっていたことなどがあります。
問題の解決には、物流関係者のみならず、建築計画・設計段階からの見直し、建物内テナントや管理業者の意識改革も不可欠です。今回は、実際に起きている建物周辺への問題やその対策についてご紹介いたします。

繁華街やオフィスビル街などを歩いていると、トラックを路上に駐車させ、ドライバーが狭いスペースで荷捌きし、台車を使って通行人の間をくぐり抜けながら建物内へ搬入している姿をよく見かけます。この光景が見られるのは、トラックが建物の駐車場に入れず、路上で荷卸し作業をせざるを得ないためです。

駐車場になぜ入れないのか。その理由として、「駐車場の高さが不足していて車高の高い貨物車両が進入できない」「貨物車用の駐車マスが不足している」ことがあげられます。そのため、ドライバーが荷物を届けるには、「建物周辺で路上駐車し建物まで搬送する」か、「駐車場が空くのを待つ」しか方法はなく、ドライバーにとっての大きな負担になっています。また、建物周辺においても、路上駐車による道路交通への影響や、歩行者・利用客の安全面での問題が生じているだけでなく、景観の妨げや、排ガス・騒音の発生等も問題となっています。このように、荷物の搬入時に生じている様々な問題は、物流活動を考慮せずに都市部に商業施設や大型ビルが建設されてきた結果といえるでしょう。

現在、大規模な建築物については、各自治体で駐車場施設の必要な有効高や、貨物車専用の駐車マス数の設置が義務付けられています。ただし、東京都では、この貨物車用の駐車場附置義務は、平成14年の改正時に導入されたものです。従って改正前の建物については、乗用車中心の設計となっており、駐車場の高さや駐車マス、荷捌き用スペース等は、貨物車に配慮されていない状態となっています。

多くの建物において、ドライバーは納品先である各階テナントまで直接納品を行っています。大規模な建物ほど、フロア間の移動やフロアごとの横の移動に多くの時間を要します。特に商業施設では、施設が開店する前の朝8時~9時に納品車が集中するため、この時間帯は駐車マスが一杯になり、トラックの順番待ちが発生するという悪循環となっています。これ以外にも、物流が考慮されていない施設では、貨物用エレベータが少ないことが多く、人貨兼用エレベータでは混雑時の利用制限により非効率になったり、利用客と荷物の動線とが重なり台車と利用客がぶつかったりするなど、安全面の問題が生じることもあります。これらの問題が起こらないようにするには、建築物の設計段階において十分に物流を考慮しておくことが重要です。

施設内で生じる物流問題対策として、近年の大規模複合施設の中には、館内共同配送が導入されているケースがあります。例えば、東京ミッドタウンでは、年間取扱荷物量は100万個以上、出入りの物流車両は25万台以上にもなります(※)。そこで、館内物流事業者が複数の納品先ごとの荷物をまとめて荷受けし、テナントごとに仕分けてまとめて搬入することにより、効率化を図っています。ドライバーによる各階への搬入が不要となり、車両滞在時間も短縮されます。このような運用による改善事例もありますが、まだまだ普及は進んでいないのが現状です。

以上のような問題や対策を踏まえ、国土交通省では有識者・関係団体・関係省庁からなる検討会を設置し、平成29年3月に「物流を考慮した建築物の設計・運用について~大規模建築物に係る物流の円滑化の手引き~」を取りまとめました。この「手引き」では、建物へのスムーズな搬入や、屋内移動スペースの確保等を図るとともに、交通や環境への悪影響がない、物流を考慮した安全な建築へのヒントについてまとめています。

具体的には、駐車場の有効高、クリアランス、緩和勾配、適正な駐車マス数・駐車マスの大きさ、荷捌きスペースの大きさ、共同配送の受付・荷受場の設置の必要性、建築物における物流の円滑化に向けた取組み等を紹介しています。
「物流を考慮しても建物の価値が上がるわけではない」「建築主やテナントには関係ない」といった意見もありますが、一方で、近年のドライバー不足・通販事業拡大に伴う宅配便貨物の急増等により、物流事業者の負担が増していることも事実です。
物流を考慮した建築物の設計・運用は、物流の効率化・労働者不足の解消・ドライバーの集配業務における労働環境の改善だけでなく、テナント事業者の利便性や経済性の向上とともに、周辺の交通渋滞の解消や街の魅力・建物のイメージ向上といった、メリット・効果も大きいと期待できます。

国土交通省が作成した「手引き」を、建築物の開発・設計・管理に携わる方、建築主や物流事業者だけでなく、テナント、地方自治体の関係者等、多くの方々が活用し、社会全体が誰にとってもより良い環境になることを期待しています。
(※ SGホールディングス㈱HPより)

大規模建築物の物流イメージ(物流が考慮されている場合)
~館内配送の共同化ありの例~

出所:国土交通省「物流を考慮した建築物の設計・運用について
~大規模建築物に係る物流の円滑化の手引き~

この記事の著者

◆出身地:千葉県館山市 ◆血液型:A 型 ◆趣味:旅行(たまに)・カメラ(少し)・麺巡り(結構)・ゴルフ(最近)
2005 年 東洋大学 大学院 工学研究科建築学専攻 卒業
【得意分野】 ・トラック輸送、鉄道輸送、緊急物資輸送、インターモーダル輸送に関する物流調査

近年弊社では、国際物流に関する調査案件が増え、今回、私も微力ながらメキシコ~アメリカの北米調査に参加しました。やはり海外へ行くと、日本とは異なる文化や慣習に多く気づかされ、大変刺激となります。学生時代は、日本と異なる世界を見たいと、一生懸命お金を貯めて、海外へ一人旅に出たものです。
今回のメキシコを中心とした北米調査でとても刺激的だったのは、道路では長大な 53ft のダブルストレーラーが多く走り、鉄道では 53ft コンテナが主流となっていたことを見たことでしょうか。メキシコもアメリカの影響を受けて変化しています。世界各国でもこのように輸送効率化を求め、今後ますます輸送単位は大型化していくのでしょうか。その時、日本はどのように対応していかなければならなくなるのでしょう?
実体験による驚きも加わり、今では世界の動向から目が離せません。今後も海外調査案件を通して、皆様に刺激となるお話しを提供できたら、と思っています。

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