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輸送中に起こる段ボール箱の擦れ事故のメカニズム

【Logistics Report】 輸送中に起こる段ボール箱の擦れ事故のメカニズム

前回(第23回)は、輸送振動における揺れ方の違いによって、段ボールの擦れ事故につながることに触れました。今回は擦れ事故が発生する様子について考えたいと思います。

段ボール箱の擦れ事故は、トラック輸送では起こりにくく、鉄道輸送で起こりやすいことをお話しました。では左右方向の振動では、段ボール箱はどのように動いているのでしょうか。特に、パレタイズ製品に与える影響とはどのようなものでしょうか。その想像モデルを図1に示します。

図1: パレタイズにおける真横に振動が加わった場合の製品振動想像モデル

図1: パレタイズにおける真横に振動が加わった場合の製品振動想像モデル

先の東日本大震災発生時、東京で高層ビルが大きく揺れるのを体験した方もいらっしゃるかと思います。この現象は長周期振動と呼ばれ、下層階より上層階の方が揺れは大きくなりますが、最上階より少し下の階の方が揺れるビルもあり、揺れ方はビルによって違いがありました。棒積みと呼ばれる同じ大きさの段ボールを1列に積み上げた状態では、パレット上でも同じ現象が発生します。しかし、2列目は同じ方向では揺れず、反対の方向へ揺れが発生する場合があります。このとき接触しあう面で違う方向に動くと、そこに擦れが発生することになります。

この現象とは別に、鉄道輸送で発生する40Hz以上の振動数が製品に伝わると、製品包装表面が細かく振動してしまうことがあります。この時、隣り合う製品との接触面積が付いたり離れたりするので、接触面積が小さくなり、共に動こうとする力が落ちてしまいます。その結果、製品が個別に動きやすくなり、擦れが発生することになります。この動きは水平方向に限らず、上下方向にも起こるので、擦れの損傷箇所を確認し、横方向に発生しているか、縦方向に発生しているかを確認することが肝要です。

横方向の擦れの場合、パレットへの積み方を棒積みから交互積み(レンガ積み)に変更することにより改善が期待できますが、縦方向の擦れは最大の要因が輸送振動そのものなので、防振措置を施す必要があります。現在、バラ積みで鉄道輸送している商品に擦れが発生するケースでは、パレット輸送を行うことにより、パレットの防振効果が期待できます。
写真の黒丸で示した擦れの事象は、段ボールから出た紙粉が留まり、振動により円を描くように動くことで発生します。もっと酷くなると穴が開くほど深く浸透していることもあります。

写真: 段ボールの擦れ

写真: 段ボールの擦れ

また、擦れの発生箇所は、内容物の影響を受けます。液体や粉体では、段ボールの胴が膨れるので主に中央付近に(図2)、ペットボトルのようなものでは、段ボール箱は構造上、側面が凹むので底部・天部に帯状に発生する(図3)傾向があります。したがって、内容物の特性も踏まえて、積み付け方法を決めていく必要があります。

図2: 内容物が液体や粉体など

図2: 内容物が液体や粉体など

図3: 内容物がペットボトルなど

図3: 内容物がペットボトルなど

一方、外側の段ボール箱を見てみると、段ボール箱の設計は圧力に対する強度を基準に設計を行いますが、横揺れで働く力・上と下が異なる方へ引っ張る力(これを“せん断”と言います)・捻じれる力に対しての、強度を考慮した設計はされていません。段ボール箱の擦れを防止するためには、建築の技法を取り入れた設計手法を参考にするなどの工夫が必要になってくるかと思いますが、コストに見合うかどうかの問題も大きいのが現状です。

この記事の著者

◆出身地:東京都大田区 ◆血液型:O 型 ◆趣味:自動車レース、カメラ、音楽
1986 年 東海大学 第二工学部 卒業
【得意分野】 ・輸送環境調査 ・包装材評価、試験

2010 年から包装、輸送試験に関する国際規格対応委員会に参加したり、2013 年に JIS の包装試験の改定委員になったりと、規格原案の作成に携わって早6年が経過しました。これらの規格は、包装の業界だけでなく、包装を使用するメーカーにも不利益が生じないようにすることが重要です。当然、物理的、化学的に正しい裏付けが必要となるため、そこを理解し、解決することが大変です。
昨年は ISO780 規格の改定委員になり、「ケアマーク」の見直しを行いました。「ケアマーク」は、段ボールなどに貼る取扱注意の指示シールのことです。実は、表記された「画の線の太さ」に意味があったり、「○や×は左右対称でなければならない」などのルールがあり、初めて知ることも多い作業でした。現在も JIS が2規格、ISO が2規格の改定中。業界の不利益にならないように留意しながら進めております。

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