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どうなる日本の物流?~第1回 日本の運送事業の評価と実態

どうなる日本の物流?~第1回 日本の運送事業の評価と実態

欧米を中心とする世界に日本の社会・経済制度や習慣に注目させ、学ぶべきものがあると認めさせた、エズラ・ヴォーゲルの著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が出版されたのが1979年。以降、トヨタ式を中心とする日本式生産方式と、それに伴うJIT = Just In-Time 配送という物流システムは、「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ届ける」というコンセプトと共に、世界の物流、世界の運送事業のモデルとして一時代を築きました。以来我が国では「日本の物流は世界のトップだ」という認識が定着したと思われますが、現時点ではどうなのでしょうか?

日本の運送事業の現在の評価は?

2016年12月に日本生産性本部が発表した「日米産業別労働生産性水準比較」というレポートは、日米の産業別生産性(1時間あたりの付加価値)と付加価値シェアを示していますが、運輸業については米国の労働生産性を100とした場合、日本は44.3にしかならないとされています。
「そんな馬鹿なことがあるはずがない。日本の運送事業者は米国の運送事業者など及びもつかないほど高度な荷主の要求に対応し、高品質なサービスを提供しているのに、それが加味されていない評価など全く意味がない。」という声が、方々から聞こえて来そうです。

しかし、2018年1月に同じく日本生産性本部が発表した「質を調整した日米サービス産業の労働生産性水準比較」というレポートでは、日本が得意だったはずの品質を付加価値に換算し調整したとしても、米国の運輸業の労働生産性100に対し日本の運輸業の労働生産性は52.6にしかならないと報告されています(下グラフ参照)。
質を調整した日米サービス産業の労働生産性水準比較

出所: 公益財団法人 日本生産性本部「質を調整した日米サービス産業の労働生産性水準比較」

もしかすると、日本の運送事業は、大方の日本人の認識とは異なり、効率的でも高品質でもないのではないでしょうか?そこで次に、日本の運送事業の実態を探って行きたいと思います。

日本の運送事業はどうなっているのか?

国土交通省は2015年9月14日から20日の7日間に、1,252社の運送事業者、62名の女性を含む5,029名のドライバーに対し「トラック輸送状況の実態調査」を実施しました。その調査報告書によると、半分近くの46%で手待ち時間が発生しており、その場合の1運行当りの平均ドライバー拘束時間は13時間27分、平均運転時間は半分弱の6時間41分、運転時間以外の6時間46分には平均1時間45分の手待ち時間と平均2時間44分の荷役時間が含まれているとされています。

また、ドライバーが荷役を行った場合に荷役料金を収受しているかどうかという質問に対しては、「運賃とは別に実費収受している」という回答は3.1%に過ぎず、57.4%が「運賃に含んで収受している」、39.5%が「収受していない」と回答しています。トラック運送事業に少しでも関わった方なら誰でもご存知の通り、運賃がカバーしているのは車上請けから車上渡しまでです。些か乱暴な言い方になってしまいますが、車上請け以前と以降に発生する荷役料金を「運賃に含んで収受している」という回答は、本当は「収受していない」ことを意味すると言っても、それほど間違いではないでしょう。

つまり、日本の半数近くのトラック運送事業者は、1運行当り13時間半前後ドライバーを拘束しているのに、その半分にもならない6時間40分前後分しかお金を稼ぐビジネスにできていないと思われるのです。この辺りに、先述の一連のレポートが指摘する日本の運送事業の労働生産性に対する低評価の本質的原因があるのではないでしょうか?

それにしても多くの方々は、どうみても大雑把にしか見えないあの米国の運送事業の生産性が日本の倍近くあるとは到底信じられないとおっしゃるでしょう。そこで次回は、米国を中心とする先進国の運送事業の実態についてお話ししたいと思います。

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この記事の著者

◆出身地:東京都中野区 ◆血液型:B型 ◆趣味:歌唱・楽器演奏・楽器蒐集・ポタリング・ウォーキング
1978 年 中央大学 法学部 政治学科 卒業
【得意分野】 複合輸送・ディストリビューションを中心とするグローバルロジスティクス

1983 年以来交互に日本とアメリカに住み、在米期間は通算で 17 年近くなりました。2008 年に帰国してからは、日通総合研究所で調査・研究・コンサルティング部門のマネジメントに従事しつつ、海外調査の時には日本と海外の輸送や物流の違いを見つけるように心がけています。とくに最近では、独自の発展を遂げてきた日本の輸送・物流のグローバル化の行く末に注目しています。日本では見られない輸送機器や荷役機器が動いているところを見ることと、各国各地の地元のローカルフードを食べることが何よりも楽しみです。

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